おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞
著者:若竹千佐子
河出書房新社(2017-11-16)
販売元:Amazon.co.jp

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。
結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――

この作品を最初に知ったのはいつも利用する図書館の新刊案内でした。
タイトルを見て宮沢賢治の「永訣の朝」の一文だと思いましたが(賢治のはローマ字だけど)あらすじを読んだら賢治は関係なさそうだったのでその時は手にしませんでした←
第158回芥川賞直木賞が発表され、この作品と「銀河鉄道の父」が受賞し(もう1作品ありますが)、賢治に関係する作品が2冊も受賞するとは、と興味を持ってそこで読もうと思いました。前置きが長かったですね。
元ネタである宮沢賢治の「永訣の朝」は妹トシが24歳の若さで病死した直後に出来た詩で、「Ora Orade Shitori egumo」は「私は一人でも生きていくから」というような意味だったと思います。なので、この作品も年老いて夫と死別し、子どもとも疎遠となり、1人で生きていく女性の話なのかなぁと漠然と思っていました。
でも少し違いましたね。文章はほぼ東北弁で、桃子さんの語り口調なので読むのが大変でしたが、自分の今までの過去を振り返り、そして今までで最もつらかった夫との別れとも向き合って、自分の気持ちを見つめ直してから生にどん欲に執着しているような気がして良かったです。
最後のシーンがまた良かったです。桃子さんは決して孤独ではありませんでした。

<河出書房新社 2017.11>H30.4.1読了