銀河鉄道の父銀河鉄道の父
著者:門井慶喜
講談社(2017-09-12)
販売元:Amazon.co.jp

明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた宮沢賢治は、昭和8年(1933年)に亡くなるまで、主に東京と花巻を行き来しながら多数の詩や童話を創作した。
賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、後には教師や技師として地元に貢献しながら、創作に情熱を注ぎ続けた。
地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、このユニークな息子をいかに育て上げたのか。
父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く、気鋭作家の意欲作。

宮沢賢治を知ったのは小学校5年生の時でした。国語の教科書に「雪渡り」があり、授業で読んだことがきっかけです。その時の担任の先生が今年はちょうど賢治の生誕100年の年だと教えてくれて、本屋に行ったら生誕100年ということで特集が組まれていて、親に文庫本を買ってもらった記憶があります。でも内容が難しくて、買ってもらった文庫本を読めるようになるまでだいぶかかってしまったのですが^^;
今考えてもどうしてそこまで当時賢治に興味を持ったのか分かりませんが、「雪渡り」という物語は好きだったんだろうなと思います。賢治のことが気になって、1人で花巻に旅行に行ったりもしました。それすら10年くらい前の話でビックリ…。
話は長くなりましたが、私の賢治との出会いはそんな感じです^m^
この作品は宮沢賢治の父親目線ということでとても興味深かったです。昔映画が公開されて、内容はほとんど覚えていなかったのですが、厳格な父親だった印象がありました。
でも厳格でありつつも子どもにはめちゃくちゃ甘くて子供の意見を尊重もする良い父親だったんだなと思いました。明治生まれの男性にしては、長男である賢治に対しての助言や対応がとても甘いですよね。自分がそうだったように、もっと頑なに家業を継げと言っても良かったと思うのですが。だからか学生時代の賢治は、この作品を読んでいると親に頼りきりの甘ったれな坊ちゃんなイメージも感じました。まあ実際お金持ちのお坊ちゃんだったんでしょうけども。
子どもの頃につきっきりで看病したという話は聞いたことがありましたが、2回もあったんですね。そして大人になってからも。周りの意見や目を気にせずにそういうことが出来るというのは、根底は子煩悩だったからなんだろうなと思います。その結果腸が生涯弱くなったのは知らなかったなぁ。
賢治が童話を書いていることも認めていないのかと思っていましたが、応援していたんですね。そうですよね。じゃないとお金なんて払わないですよね。嬉しそうに賢治が書いた詩や童話を読んでいる姿は何だか可愛らしさすら感じました。
賢治もトシもですが、若くして亡くなり、無念だったとは思いますが、それでも一応は好きなことややりたいことが出来て幸せも感じていたんじゃないかなと思います。そう思える作品でした。賢治のことについては結構読んだつもりだったんですけど、お父さん視点というのは珍しくて新鮮で、面白かったです。

<講談社 2017.9>H30.2.11読了