テーラー伊三郎テーラー伊三郎
著者:川瀬 七緒
KADOKAWA(2017-12-08)
販売元:Amazon.co.jp

老若男女よ、全力で着飾れ。退屈を吹き飛ばす、曲者だらけの痛快エンタメ!
「自分の人生は、自分以外のだれにもゆだねるな」
死にかけの商店街に突然飾られたコルセット“コール・バレネ”。
それは、少年の人生を変える、色鮮やかな“革命”の始まりだった。
福島の保守的な田舎町で、ポルノ漫画家の母と暮らす男子高生・海色(アクアマリン)。
17歳にして半ば人生を諦めていたが、ある日、古びた紳士服仕立て屋「テーラー伊三郎」のウィンドウに現われた美しいコルセットに心奪われる。
頑固な老店主・伊三郎がなぜ女性下着を――騒然となる町内を尻目に、伊三郎に知識を買われたアクアは、共に「テーラー伊三郎」の新装開店を目指す。
活動はやがて、スチームパンク女子高生や町に埋れていた職人らを巻き込んでいき……。
老若男女、強烈なキャラクターたちが活躍する骨太痛快エンタメ!

初読み作家さんです。この方の作品はずっと気になっていたのですが、今回ようやく手に取ることが出来ました。
タイトルが気になって内容はあまり知らずに読み始めたのですが、アクア同様寂れた商店街にいきなりコルセットが飾られたという展開にちょっと胸が熱くなりました。
自分の境遇に、自分の体躯に、自分の名前に、色んなことが積み重なって人生を諦めていたような少年アクア。身を守るようにひっそりと生きてきたアクアの前に突然登場した、コルセット、コール・バレネ。正直私は知りませんでした。それでもシャッター街と化している商店街に展示されたら目立つということは分かります。
伊三郎とアクアとスチームパンクに職人たち。それぞれ一人では決してなしえなかったことを、それぞれ出来ることで埋めて言った展開がとても好きでした。
何よりとても頑固そうで妻以外は信用していなさそうな伊三郎が、若者の考えもちゃんと尊重しているのが良かったです。中途半端に年を取っている人の方が所詮子供の言うことと受け入れていなかった気がします。80代と10代の交流、素敵でした。
そして最大の敵だった真鍋女史。彼女は自分が正しいと思っていることに自信を持っていて、自分が間違っているとはつゆほども思っていないんでしょうね。そして正しくともその正しさを証明した後、周りがどうなるかなんて考えていないんでしょうね。それはある意味正義の味方でもあり、敵にもなる。でもまあ、人は簡単に変わりませんから、アクアの母親のようにうまくかわしていくことしか解決策はないのでしょうね。いろんな考えの人間がいるわけですし。アクアの担任もいい味出していましたねー。田舎に押し込められて退屈していたという担任(笑)アクアをちゃんと一人の人として対等に話をしてくれる伊三郎と同じような人物でした。
そして職人の方々。もうかっこよすぎましたね。読んでいてこちらも胸が熱くなりました。そして読む手が止まらなくなりました。面白かった!

<角川書店 2017.12>H30.1.7読了