
著者:柴崎 友香
中央公論新社(2017-10-05)
販売元:Amazon.co.jp
夫・一俊と共に都営団地に住み始めた永尾千歳、39歳。一俊からは会って4回目でプロポーズされ、なぜ結婚したいと思ったのか、相手の気持ちも、自分の気持ちも、はっきりとしない。
二人が住むのは、一俊の祖父・日野勝男が借りている部屋だ。勝男は骨折して入院、千歳に人探しを頼む。いるのかいないのか分からない男を探して、巨大な団地の中を千歳はさまよい歩く。はたして尋ね人は見つかるのか、そして千歳と一俊、二人の距離は縮まるのか……。
三千戸もの都営団地を舞台に、四十五年間ここに住む勝男、その娘の圭子、一俊、友人の中村直人・枝里きょうだい、団地内にある喫茶店「カトレア」を営むあゆみ、千歳が団地で知り合った女子中学生・メイ。それぞれの登場人物の記憶と、土地の記憶が交錯する。
千歳を始めとして関わる様々な人たちの人生が細かく描かれている作品です。千歳目線かと思ったら一俊目線になったり現代の話かと思ったら過去の話だったり。始めはこの交錯する展開に戸惑いながら読んでいましたが読んでいくにつれて1人1人の過去が少しずつ分かっていき、最後は戸惑うことは無くなっていました。
千歳と一俊の馴れ初めもちょっと不思議で、勝男が千歳に頼んだ人探しも理由が分からなくて、1人1人の日常が過去がさらさらと流れていくような感じで読んでいました。
私は団地に住んだことがないので密集地帯にたくさんの人が住んでいる空間というのはあまり予想がつかなくて。たくさんのポストが並んでいるとかその団地内での近所付き合いとか、そういうことをするんだなぁと想いながら読んでました。
どうして勝男がある人を探しているのか、その理由が分かった時は何だか切なくなりました。時代のせいもあるのだろうけど、悲しかった。
千歳と一俊の関係も展開があるのだろうかと思ったけど、少しありましたね。きっと2人は少しずつお互いを探り合いながら知って行きながらゆっくり夫婦になっていくんだろうなと思いました。
<中央公論新社 2017.10>H29.12.2読了