弥栄の烏 八咫烏シリーズ6弥栄の烏 八咫烏シリーズ6
著者:阿部 智里
文藝春秋(2017-07-28)
販売元:Amazon.co.jp

八咫烏の一族が支配する異世界・山内。
「うつけ」の若宮と「ぼんくら」近習の少年・雪哉という若き主従の活躍を中心に、賢く華やかな宮廷の姫君、若宮を取り巻く護衛の青年たちが繰り広げる、お妃選びと権力争い、友情と断絶、成長と再生を描いた壮大な和風ファンタジー。
一冊ごとに表情を変えながら読者を魅了、80万部を突破したこの物語の第一部完結篇「弥栄の烏」は、主人公・雪哉の弟が武官訓練所である剄草院に入学準備する場面から。その実力を認められ、全軍の参謀役にまでなった雪哉、敵対する勢力を抑えて朝廷の実権を掌握した若宮が治める山内を大地震が襲い、開かれた金門の扉の向こうには、山内を恐怖に陥れた「人喰い大猿」が現れた。
ついに始まった、猿と八咫烏の最終決戦。若宮は名前を取り戻し、真の金烏となれるか。山内は栄えるのか、それとも滅びに向かうのか―ー

ついに第一部完結ですね。まずはお疲れ様でしたと言いたいです。
シリーズも6冊目だったんですね。1冊目からこの世界を20歳で作り上げた著者さんは凄いなと思っていましたが、まさかここまで壮大な世界になるとは思いませんでした。更に前作を読んだことでファンタジー小説の中に現代の自分たちの世界も絡んでいることが分かってなおの事脱帽。1冊目の花嫁選びがもはや遠い昔のことのよう…。
今回の作品は前作「玉依姫」と重なっている部分がありましたねー。そうそう、こんなことがあったと思い出しながらの読書でした。
ついに因縁の烏と猿の対決が!と思ったのですが、色々なことが意外な展開を見せてビックリ。読む手が止まらず、あっという間に読んでしまいました。
雪哉も大きくなって立派になって…。でも、中盤の展開は読んでいてもとても辛かったです。先を読み進めるのが怖いくらいにショックでした。読んでいる読者がショックなんだから当の本人たちはもっとショックですよね←
雪哉が有能なのは分かるのですが段々ロボットのように感情を無くしていく姿が読んでいて辛かったです。みんな冷血漢と言っているけどきっとそれだけではないと思いながら読んでいました。
最後のシーンの雪哉の姿に、私は涙が出ました。
ずっと戦ってきて死と向き合うことが多くて、最後に眩くて尊い真っ直ぐな生と向き合って、雪哉はようやく暗い洞窟から光差す世界へ抜け出すことが出来たのかなと思いました。良かった。
それにしても浜木綿はなんて素敵な女性なんでしょうか。境遇もあると思いますが懐が広くて深くて。やっぱり若宮の妻は浜木綿しかいないと思いました。真赭の薄も凛々しくて素敵な女性でした。2人とも憧れる女性です。
第二部はどんな形で進んでいくんでしょうか。今から楽しみです。

<文芸春秋 2017.7>H29.10.28読了