迷: まよう迷: まよう
著者:アミの会(仮)
新潮社(2017-07-31)
販売元:Amazon.co.jp

はじめてのひとり暮らし、旅先、迷路、父か母か。そして、俺の人生を狂わせた、憎いあいつを殺してしまうか…。誰もがいつでも迷っている。迷うほどに、心を揺さぶる。短編の饗宴。最強の作家集団、四たび集結。全作品書き下ろし。

人気作家さん8人の書き下ろし!テーマが迷うというだけで皆さん書かれたそうですが、色々なテーマがあって面白かったです。
「未事故物件」近藤史恵
最初はいないはずの上の階から未明に洗濯機の音がするというホラーかと思ったのですが、近藤さんらしいある意味とても怖いお話でした。私は背が大きいけど気を付けようと思いました。気を付けようがないけど^^;
「迷い家」福田和代
塩尻が迷い込んだ無人の家に用意された豪華な食事。こちらは塩尻の考えと同じく「遠野物語」のマヨヒガのようなものなのかと思ったのですがとんでもないカラクリでしたね…。気づかなかった。美宅という人が怪しいかと思って怪しんでました。すみません←
「沈みかけの船より、愛をこめて」乙一
こちらの迷いはまた全然テイストが違いましたね。両親が離婚しようとしていて、どちらについていこうか考える娘の話。父母の離婚の原因は後々わかり、そして母の悩みや想いも分かっていきます。こういう切ない話を書くのも上手いですね。
「置き去り」松村比呂美
海外へは私は1度しか行ったことがなく、また現地に友人がいたのでひたすら楽しいで終わったのですが、一人でツアーに行って現地で忘れられて置き去りにされるってめちゃくちゃ怖いですね…。実際に自分がそうなったら…どうなるんだろう。オチは何となくわかりましたが、彼女は逞しい女性だったんですね。自分を出すことが出来て良かった。
「迷い鏡」篠田真由美
篠田さんの作品は気になりつつアンソロジーでしかまだ読んだことがないのですが、最後にゾゾっとさせる作品が多い気がします。この作品もそうでした。とにかく主人公たちがいけ好かない(笑)こんな傲慢で高飛車な先輩になぜついていくと思っていたのだけど、ちゃんと裏があったんですね。
「女の一生」新津きよみ
この女性の人生悲しすぎる…。そして選ばなかった方の人生を想像するとかもっと悲しい。最後の女性はどういう状態だったんだろうか…。どうか幸せに。
「迷蝶」柴田よしき
妻を失った男性が再び始めた蝶の撮影。そこで出会った人とは…。
因果応報というか、人は色んな所で繋がっているんだなぁという感想。でも、罠を仕掛けた男性はちょっと悪趣味かな。
「覆面作家」大沢在昌
「私」は編集者から柏木潤という作家を知っているかと聞かれる。その作家は覆面作家だった。しかし編集者はその作家を40代女性だという。「私」はかつての友人の事を思い浮かべる。
短編なのに重厚感を得られた気がします。流石です。「私」とかつての同志海老名との会話。覆面作家の正体は「私」が思う人だったらいいな。でもそうだとしても確かに会うべきなのかどうか…難しいですね。

<新潮社 2017.7>H29.10.18読了