ヴィオレッタの尖骨ヴィオレッタの尖骨
著者:宮木 あや子
河出書房新社(2017-09-14)
販売元:Amazon.co.jp

あとどのくらい私たちはこうやって肌を合わせられるのですか。世間から隔絶された場所で生かされている美しい少女たち。快楽に溺れながらも、真実の情愛を求める彼女たちに救いはあるのか?儚くも美しい恋愛小説集。

「校閲ガール」を読んだから読んでみようと思ったら度肝を抜かれる作品ですよね^^;まあ今までもこういう作品は書かれているから宮木さんの作品を日頃読まれている方は驚きませんけど。そして私は宮木さんが書かれるこういう世界観は嫌いじゃないです。暗いけど。
今作は4編からなる中編小説です。それぞれの作品が百合と一言で表したくないけどそんな雰囲気の作品たちでした。
出てくる主人公たちの感情は少し凶器的で怖さもありました。でも、気持ちが全く分からないというわけではなかったです。毎日を生きていく不安、未来の不安。それは私も少なからず持っているから。
表題作「ヴィオレッタの尖骨」はとても凶器的で、でも綺麗さや美しさも感じる作品でした。ひづると絵梨はそれぞれ突出した音楽の才能を持っているのに身近な人間が2人を外の世界へ連れていこうとはせず、籠の中の鳥のよう。そんな高校生活の中で出会った紫菫という美しい少年。3人の関係は儚さもあったけど美しさも感じました。
「星の王様」戸籍を持たない売春婦の弌花と双葉。二人は外へ出て行きたくても戸籍がないから生きていけない。自分たちを育ててくれたババアはもうすぐ死にそうで2人はそれぞれこれからの事を朧気ながら想い始める。弌花が抜毛症で文章からもだんだん髪の毛が無くなっていく姿が分かって切なくなった。
「紫陽花坂」この作品が1番長かったですね。主人公が夕子という少女なのかと思ったら最後は意外な展開に。意外なような、予想できたような。
演劇部、文学部に所属する少女たちの深い傷痕に読んでいて辛かった。

<河出書房新社 2017.9>H29.10.9読了