
著者:高殿 円
KADOKAWA(2017-06-24)
販売元:Amazon.co.jp
江戸末期・明治大正・昭和、百二十年の間に女性の生き方はこう変わった!
金沢城で生まれた私の結婚相手はわずか生後半年で決まった。(中略)早すぎると思うかも知れないが、当時ではごくごく当たり前のことで、大名の子の結婚はすべて政略結婚、祝言の日まで互いに顔を合わせず、文も交わさぬのが慣習である。
私の生まれた文化の世とはそういう時代であった。――第一章「てんさいの君」より
不思議な縁(えにし)でつながる、三つの時代を生き抜いた三人の女性たち。
聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らを三部構成でドラマチックに描き出した壮大な大河ロマン!
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加賀藩主前田斉広(なりなが)の三女・勇(いさ)は、生後半年で加賀大聖寺藩主前田利之(としこれ)の次男・利極(としなか)のもとに嫁ぐことが決まっていた。やがて生まれ育った金沢を離れ江戸へと嫁いだ勇は、広大な屋敷のなかの複雑な人間関係や新しいしきたりに戸惑いながらも順応し、大聖寺藩になくてはならない人物になっていく。だが、石高十万石を誇る大聖寺藩の内実は苦しかった。その財政を改善させるような産業が必要と考えた利極と勇が注目したのは――(「第一章 てんさいの君」)。
加賀藩の分家・小松藩の子孫である万里子。パリで生まれ、ロンドンで育った彼女は、明治41年帰国し、頑なな日本の伝統文化にカルチャーショックを受ける。やがて家とも深い縁のある九谷焼をアメリカで売る輸出業に携わることとなり、徐々に職業夫人への展望をいだくが、万里子の上に日本伝統のお家の問題が重くのしかかる。日本で始めてサンフランシスコ万博の華族出身コンパニオンガールになった女性は、文明開化をどう生きるのか――(「第二章 プリンセス・クタニ」)。
貴族院議員・深草也親を祖父に持つ花音子は、瀟洒豪壮な洋館に生まれ育ち、何不自由なく暮らした。だが、花音子が幼稚園に上がるちょうどその頃、昭和恐慌によって生活は激変。すべてを失った花音子と母・衣子は、新宿の劇場・ラヴィアンローズ武蔵野座に辿り着く。学習院に通いながら身分を隠して舞台に立つ花音子は一躍スターダムにのし上がるが――(「第三章 華族女優」)。
三人の女性の人生を描いた中編小説。江戸末期、明治、大正、昭和と時代が流れていきますが、割と近年と言えるこの時代でも血筋というのは大事にされていたんだなということがとてもよく分かりました。
始めの主人公勇は物心がつくずっと前から結婚相手が決まっていて、特に反対もせずにその話を受け入れていました。こういう時代だったという言葉が何度も出てきましたが、昔は特に女性が生きにくい時代だったのかなと思います。生きにくいとは違うかな。道筋が同じというか生きる道が決まっていたというか。3人の主人公の中で勇姫だけは実在された人物だったんですね。こちらで書かれていたことはすべて史実なのでしょうか、お子さんのこととか。それなら本当に波乱万丈の人生ですね。でも気品高く誇りを持って生きている姿が素敵でした。
第二章の万里子は帰国子女で日本の堅苦しい文化があまり好きではないようで、学校になじめないもの分かりましたね。それでもそういう性格にあこがれを抱く同性もいるわけで、ミコとの関係はとても好きでした。明治、大正という時代でも昔ながらの風習やお家についての諸々は根強かったんですね。この時代の華族の話とかあまり知らなかったので勉強になりました。私はこの章が1番好きでした。万里子の生き方はかっこいいし憧れます。
第三章は昔ながらの日本に別れを告げるような今につながる物語でした。華族は昭和22年に廃止になったんですね。家を守る、血筋を守る、それを代々受け継いできた家柄の人たちにとってはそれは命をなげうつくらいにショックな出来事だったのかもしれないですね。ある意味花音子はそういう時代に翻弄された女性だったかもしれませんが、それでもちゃんと自分を持って生きていて、魅力的でした。お友達にはなれなそうだけど^^;
昔を生きた女性の生き様を読むことが出来て良かったです。
面白くて一気読みでした。
<角川書店 2017.6>H29.10.6読了