BUTTERBUTTER
著者:柚木 麻子
新潮社(2017-04-21)
販売元:Amazon.co.jp

結婚詐欺の末、男性3人を殺害したとされる容疑者・梶井真奈子。世間を騒がせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿と、女性としての自信に満ち溢れた言動だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、親友の伶子からのアドバイスでカジマナとの面会を取り付ける。だが、取材を重ねるうち、欲望と快楽に忠実な彼女の言動に、翻弄されるようになっていく―。読み進むほどに濃厚な、圧倒的長編小説。

いやー…濃かったですね。濃厚な長編小説。まさにタイトルのバターのような濃厚さでした。里佳が梶井にインタビューをし、途中梶井の言葉に翻弄されて吸い込まれていくのではないかと心配になりました。私も、梶井の言葉に引き込まれて行きました。
冒頭の、里佳が伶子にバターを買ってきてと頼まれて、なかったからマーガリンを買って言った時、思わず突っ込んでしまいましたよね。バターとマーガリンは違うしバターをちゃんと使う人ならマーガリンは邪道というか使わないんじゃないかなぁとか。
それくらい、料理や食べ物に関心がなかった人が、最後は変わりましたよね。
私も少し高めのバターを買って食べてみたいなーと思いました。それに食べ物に対しての考え方も引き込まれました。健康とか美容とか色々気を付けて食べているのに効果があるんだかないんだかわからなくて、それなら食べたいものを食べたいように食べればいいんだよねー。とか。段々消化不良になっていって同調しなくなっていきましたが^^;
この作品が元になっている事件から、もう8年も経つんですね。当時は確かに衝撃的だったなぁ。失礼ながら容疑者の顔を見たときはあれ?と思いましたよね。ブログの写真も美味いこと撮ってて全然雰囲気が違ったって言うのもあるし…。
梶井の男女の関係の考え方は時代錯誤で今の時代とは逆をいっていますよね。それでもある程度の年代の男は確かにそういう女性を求めているのかも。いや、若者だってそういう想いを持っている人やそれが当たり前だと思っている人もいるかもしれない。
それでも私は里佳のような生き方の方が良いな。あんな激務は無理だけどちゃんと仕事を持って自分が稼いだお金で好きな物を買いたい。
里佳は真摯に梶井に向き合っていたと思うけど、まあ素直に進むとは思わなかったですよね。こうやって梶井は人を信じさせて裏切ってこれからも一人で生きていくんでしょうね。悲しいですね。
この事件を通して里佳をはじめ周りの人たちが自分の生き方と向き合って良い方向へ行ったことは良かったかな。

<新潮社 2017.4>H29.7.16読了