みすゞと雅輔みすゞと雅輔
著者:松本 侑子
新潮社(2017-03-03)
販売元:Amazon.co.jp

心の詩人・金子みすゞ、知られざる光と影、自殺の謎とは?実弟・上山雅輔(昭和の喜劇王・古川ロッパの脚本家)の膨大な日記を読み解き、みすゞの童謡と生涯、二人の青春と愛憎、別れを、弟の目を通して描く、画期的伝記小説!

タイトルに惹かれ、この本を読みました。松本さんの作品は15年前に読んで以来2冊目でした。びっくり。
金子みすゞさんの作品は学生の時に国語の授業で習っていたので知っていますし、東日本大震災の直後によく流れていたCMでも耳にしていましたよね。
でも私の中で1番印象的なのは2001年に放送されたテレビドラマ「明るいほうへ明るいほうへ」ですね。松さんがテル役で、健君が正祐役でした。映画の「みすゞ」も見ました。
ドラマを見たときはただただテルが可哀想で、正祐もちゃんとしたお坊ちゃんで、正祐の養父とテルの夫が憎かったという感想だったのですが。
今回この本を読んで、その気持ちはだいぶ変わりましたねー。
正祐の義理の父親に関しては印象はあまり変わらないんですけど、怖くて憎らしいと思っていたテルの夫の印象がだいぶ変わりました。ただ酷い夫なのかと思っていたのですが、そうではなかったんですね。この人も上山家に翻弄されてある意味犠牲者だったのかもしれません。女遊びがひどくてテルに淋病を移して、自分勝手だと思っていたけど、家に安らぎを求めていたけど妻は詩の創作のため一人の世界に入り込む。真面目で甘えるわけでもなくて、旦那さんも寂しかったのかなと思いました。テルが自殺してからの夫の反応も想像とは違いました。無理矢理娘を連れていこうとしているのかと思ったらそういうわけでもなく。いろんなすれ違いが生んだ悲劇だったのかもしれないですね。
そして正祐ですよ。読まなきゃよかったと思うくらいに印象が変わりましたよ。ここまで放蕩息子だったとは思いませんでした。家を廃業に追い込むは女遊びは激しいはなんだこいつは!!←
父親と家業に反発している割には親のすねをかじりまくっているじゃないか!
そして東京で働いている時のテルへの手紙!何だあの上から目線は!!
と何だか憤りがハンパなかったですが^^;
ただ、金子みすゞに関して正祐目線での資料というのは今まであまりなかった気がするので新鮮でした。2014年に正祐の日記が発見されたというのも凄いですね、運命的なものを感じます。
にしても気になったのはタイトル。最初雅輔って字が違うのでは?と思ったのですが後にそう名乗っていたんですね。でもこの内容ならテルと正祐という名前の方が良く登場したので2人の名前に違和感を感じました。まあその名前だと分かりにくいですよね^^;
中にみすゞさんの死の前日の写真があるのですが眼差しが凛としていて美しかったです。

<新潮社 2017.3>H29.4.28読了