三鬼 三島屋変調百物語四之続三鬼 三島屋変調百物語四之続
著者:宮部 みゆき
日本経済新聞出版社(2016-12-10)
販売元:Amazon.co.jp

江戸の洒落者たちに人気の袋物屋、神田の三島屋は“お嬢さん”のおちかが一度に一人の語り手を招き入れての変わり百物語も評判だ。訪れる客は、村でただ一人お化けを見たという百姓の娘に、夏場はそっくり休業する絶品の弁当屋、山陰の小藩の元江戸家老、心の時を十四歳で止めた老婆。亡者、憑き神、家の守り神、とあの世やあやかしの者を通して、せつない話、こわい話、悲しい話を語り出す。「もう、胸を塞ぐものはない」それぞれの身の処し方に感じ入る、聞き手のおちかの身にもやがて、心ゆれる出来事が…。日経朝刊連載「迷いの旅篭」、待望の単行本化!

シリーズ第4弾。今回は百物語だけではなく、おちか自身のことでも変化がありましたね。
「迷いの旅籠」最初のお話としてぴったりでしたねー。ある村で起きた現象。絵師が行ったことは生きている者としては禁忌ですよね。死んだ人は行き返らない。当たり前のことだけど愛おしい相手であればあるほどそれを信じたくはない。でも、それを受け入れなければならない。最後はその出来事すらが現か幻か。分からないことがよかったのかもしれないですね。
「食客ひだる神」
読んでいる側としてはひだる神の存在は面白くて可愛いと思うのだけど、当事者としては笑い事ではないですよね^^;毎年必ず長期休業する弁当屋さんの秘密。それでも別れは突然でそのシーンは切なかったです。
「三鬼」
表題作ですね。このお話が1番哀しくて惨いものでした。ある村の秘密。そこに住まざるを得ない人たちは、罪人だと言われているけどそれでも本人たちが罪を犯したわけではない。それでもここで生き続けるしかないし、また働けなければ文字通り生きていけない。酷い村でしたけど、そこでの任務を終えてからの清左衛門と利三郎の関係が意外過ぎて良かったです。あと清左衛門の妹志津と。それでも語りを終えた後の話が悲しかったですね。話す本人は覚悟が出来ていたのかもしれませんけど…。
「おくらさま」
こちらはいつもと雰囲気が違いましたねー。梅という少女のような恰好をした老婆が語りにやってきて話す、幼い頃の話が怖かったです。美仙屋という香具店の三姉妹の三女だったお梅の話。香りがいくつか出てきましたが、お梅が身に着けていたという白梅香、香りは分かりませんが「るろうに剣心」で出てくる香りなので懐かしさを感じました^m^
「おくらさま」の正体は物悲しかったですね。守り神ではなかったです。それでもお梅は最後におちかに話を聴いてもらって良い最期だったのではないかと思います。
従兄妹の富次郎はなかなか素敵な青年でしたねー。おちかにとって富次郎が側にいれば人としても成長できるような気がしました。そしておちか自身の別れと出会い。若先生と長い時間をかけて恋愛へ発展していくのかなぁと思ったらそうではなかったので残念でした。それでも新たな出会いもありましたね。貸本屋という職業も良いですし^m^勘一は今後も登場するのでしょうか。
このシリーズは百物語で1冊に4編くらいだから一体いつまで続くんだろうと思っていましたが、おちかがもうやらなくていいのではないかと思った時、百に満たなくても終わる時が来るのかもしれないですね。おちかが過去と決別し、前を向けるのならそれでいいのかなと思います。読者としてはまだまだ物語を読んでいたいですけども。

<日本経済新聞出版社 2016.12>H29.4.15読了