東京會舘とわたし(上)旧館東京會舘とわたし(上)旧館
著者:辻村深月
毎日新聞出版(2016-07-30)
販売元:Amazon.co.jp

東京會舘とわたし(下)新館東京會舘とわたし(下)新館
著者:辻村深月
毎日新聞出版(2016-07-30)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
(上)海外ヴァイオリニストのコンサート、灯火管制下の結婚式、未知のカクテルを編み出すバーテンダー…“會舘の人々”が織り成すドラマが、読者の心に灯をともす。大正十一年、丸の内に誕生した国際社交場・東京會舘。“建物の記憶”が今、甦る。激動の時代を生きた人々を描く。
(下)「直木賞の時に帰ってきます」あの日、この場所で交わした約束があった。
渾身の感動長編、堂々の完結。辻村深月が本当に書きたかった物語!
昭和46年、新館への建て替えを経た東京會舘。緊張で肩を震わす舞台女優、東日本大震災の日、直木賞授賞を知らされた青年……
優しさと慈しみに満ちた物語は、ついに終章(フィナーレ)へ

東京會舘、私はこの作品で初めて知りました。東京駅の近くにあるんですね。言い訳になってしまいますが北海道民は東京へ行く際は東京駅ではなく品川駅に降り立つことが多いので^^;東京駅近辺ってあまり行かないんですよね…。
長い長い歴史のある建物ですから、たくさんの方々が関わりいろんな人生の分岐点に立ち会っているんだろうなと感じる物語でした。
何よりも従業員の方々のサービスの素晴らしさ。これに尽きますよね。やっぱり相手が笑顔でいてくれたり優しい言葉をかけてくれたりしたら、ほっとしますし安心しますもんね。
この物語は辻村さんが実際に取材を細かくされたそうですが、東京會舘のHPでも「私の東京會舘物語」というタイトルで実際に利用された方が贈られた言葉が載っていました。ここをもとに取材されたのかな。タイトルもそのままのもありました。こちらも読んで感動しました^^
テレビのインタビューで辻村さんがこちらで結婚式をされたそうで。更に直木賞を受賞された時にそのことを話された時に「もちろん覚えておりますよ。お帰りなさいませ」と言われたとおっしゃっていてもう何だかそれだけで涙が出そうに←
上巻で好きだったのは「灯火管制の下で」ですね。戦時中の結婚式。だからこそのスタッフの皆様の配慮が素晴らしいなと思いました。ほとんど会ったことのない相手との結婚。不安でたまらないですよね。時代もありますけど…そんな中での「きっと。きっと幸せになってくださいね」という言葉。どんなことがあってもその時のことを想い出して頑張れますよね。お話が時系列なので働くスタッフさんが違うお話に登場したりするのもまたいいですね。
下巻の方が現代に近づいてより身近に感じました。
「金環のお祝い」素敵でしたね〜。亡くなった旦那様との思い出とともに金婚式を祝う姿が本当に素敵でした。
「あの日の一夜に寄せて」冒頭のお手紙は本当に送られてきたものだそうですね。東日本大震災の時のあの一夜は実際にあったことなんですよね。自分たちも大変だったでしょうにこういった緊急時での対応も素晴らしいですね。
「煉瓦の壁を背に」いつも芥川賞と直木賞受賞のニュースは見ているのに、その会場が東京會舘だったとは知りませんでした。まあ、今は帝国ホテルですけども。この作品で登場する小椋さんのモデルは辻村さんだろうと思いましたけど「改装前の東京會舘での最後の直木賞受賞」というので調べたらやっぱり辻村さんの受賞は2012年でしたね。受賞作すら忘れてました^^;勝手に「ツナグ」でだと思っていた…。編集者さんが「うちの出版社で経験したことのないことを経験させてくれてありがとう」みたいなことが書かれていて、辻村さんの受賞作もあまり受賞したことがない出版社だったのかなと思ったらそこは違いました^m^でも違う賞ではそういうことがあったのかもしれないですね。
小椋さんの両親のことは私は最後まで納得できなかったですし許せなかったです(私が)それでも、一応は和解出来て良かったねと思いました。「直木賞の時に帰ってきます」と辻村さんはおっしゃっていないと思いますが^^;でもきっと結婚式をされた時に今度は直木賞を受賞した時に…とは思われたかもしれないですよね。あれ、インタビューで言っていたかな。
最後の結婚式のお話も良かったです。上巻に登場した方も出てきて集大成のようでしたね。
東京會舘は今は改装中で平成30年でしたっけ。改装してからになっちゃいますけど、一度行ってみたいなと思いました。

<毎日新聞出版 2016.7>H28.10.2読了