今はちょっと、ついてないだけ今はちょっと、ついてないだけ
著者:伊吹 有喜
光文社(2016-03-17)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
かつて、世界の秘境を旅するテレビ番組で一躍脚光を浴びた、「ネイチャリング・フォトグラファー」の立花浩樹。バブル崩壊で全てを失ってから15年、事務所の社長に負わされた借金を返すためだけに生きてきた。必死に完済し、気付けば四十代。夢も恋人もなく、母親の家からパチンコに通う日々。ある日、母親の友人・静枝に写真を撮ってほしいと頼まれた立花は、ずっと忘れていたカメラを構える喜びを思い出す。もう一度やり直そうと上京して住み始めたシェアハウスには、同じように人生に敗れた者たちが集まり…。一度は人生に敗れた男女の再び歩み出す姿が胸を打つ、感動の物語。

この本を予約した頃、私もタイトルのようなことを思っていて。
絶対に自分の心に響く作品だろうなと思いました^^;そして実際にそうでした。
主人公はちょっとどころじゃないです。20代半ばで成功をおさめたものの、人の借金を背負い、10数年借金を返し続けて完済し、気づけば40代。
この作品は連作短編集になっているのですが最初のお話は読んでいて辛かったです。
主人公の立花は決して過去に縋っているわけではなく、むしろ過去をさらけ出すのを怖がっている。それでも諦めかけていた自分の夢をまた少しずつ追い始める姿に応援したくなりました。元々才能はある人なんですよね。確かに20代の頃は持て囃されて登りつめた部分もあったのかもしれないけど。
そして最初のお話で散々立花の事をバカにした宮川が、まさかバディみたいな感じになるとは思わなかったなぁ。ひどい奴だと思ったけど、だんだん良い人に見えてきて困りました^^;
瀬戸さんも自分の夢に向かって歩み始めたし、佐山さんはちょっと心配だけどでもちゃんと自分の足で歩いているし。
いい年した大人が自分のやりたいことを楽しそうにやっている姿にいいなーと思って読み終えました。
伊吹さんの作品は文章が優しいです。どんな人にも温かい手を差し伸べてくれているようで。私もこの物語の主人公たちのように前を向いて歩いていけるんじゃないかと思わせてくれます。
私も多分ついていない時期は抜けてきたかな。
でも更に前を向いていけるように精進していかなければとも思わせてくれた作品でした。

<光文社 2016.3>H28.6.11読了