真実の10メートル手前真実の10メートル手前
著者:米澤 穂信
東京創元社(2015-12-21)
販売元:Amazon.co.jp

高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と 呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と 合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める……。太刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。『王とサーカス』後の6編を収録する垂涎の作品集。

「王とサーカス」に続いて太刀洗万智の話です。
時系列はバラバラなのかな。東洋新聞に在籍していた時の事件もフリーになってからの事件もありました。
「真実の10メートル手前」
万智の東洋新聞時代のお話。万智の推理力にただただ脱帽でした。万智が従業員の方にお金を渡したところであれ?と思い気づきましたが、それでも一連の推理は流石でした。
真相は、あと数時間、あと10メートル、どうにかならなかったのかとただただ悲しかったです。
「正義感」
始めは語り手の男性同様、女性に嫌悪感を抱いていたのですが最後まで読んでなるほどと思いました。もう見事としか言いようがありません。自分勝手な正義感はただただ迷惑ですよね。確かにマナーが悪い人はたくさんいてイラッとすることもたくさんありますけど、でもやってはいけない境界線はありますから。
万智に協力した男性は「さよなら妖精」に出てきた男性ですよね。全然覚えていないのですが^^;ただ、万智に結構失礼なことを言ったってことだけ覚えている←
「恋累心中」
高校生の男女の心中は真実で2人の自殺もそれが真相なのだけど、その裏に隠された自分勝手な一人の人の言動にただただ腹が立ちました。真剣に悩んでいる10代の男女をいわば利用したわけですからね…。利用するんじゃなくて2人の未来をどうして考えられなかったのか。ただただ苦い想いだけが残りました。
「名を刻む死」
孤独死をしている老人を発見してしまった中学生の京介君。彼はとても純粋で優しい少年なんだろうなと思いました。そんな少年を悩ませるような男ではなかった。
本当に生きている間そして死んでもなお自分の事しか考えていない男だったのだなと思いました。京介が万智の言葉をちゃんと受け止めて責めないで生きていってほしいと思いました。
「ナイフを失われた思い出の中に」
16歳の少年が3歳の少女を殺害した事件を追っていた万智。そこへかつての友人の兄ヨヴァノヴィチ氏が来日し、行動を共にすることになる。事件の真相もさることながら2人の事も気になりました。妹というのはマーヤの事だろうなと思い、少し切なくなりました。
「綱渡りの成功例」
戸波夫妻がしてしまった事、それは何も問題のあることではないと思いました。生きていくためには仕方のないことだってあります。それを経験していない人がとやかく言う問題ではないと思いました。
でも私はそんなに違和感を感じることはありませんでしたけどね。私もあれをかけて食べるけど、普通にそれだけでボリボリ食べることもありますし^^;

<東京創元社 2015.12>H28.2.14読了