パノララパノララ
著者:柴崎 友香
講談社(2015-01-15)
販売元:Amazon.co.jp

二八歳の田中真紀子は、友人のイチローから誘われ、彼の家に間借りすることになった。その家は建て増しを重ねた奇妙な家で、コンクリート三階建ての本館、黄色い木造の二階建て、鉄骨ガレージの三棟が無理やり接合されていた。真紀子はガレージの上にある赤い小屋に住むことに。イチロー父は全裸で現れるし、女優の母、無職の姉、モテ系女子の妹も一癖ある人ばかり。そんなある日、イチローは、自分はおなじ一日が二回繰り返されることがあると真紀子に打ち明けるのだった。芥川賞作家が放つ、新感覚パノラマワールド!

読んでいて途中具合が悪くなりそうになるくらい、見につまされることがありすぎてそれに輪をかけて人が悪い意味で個性的すぎて消化不良になっている感じです…
真紀子の気持ちが分かりすぎて、文の気持ちも分かりすぎて、読んでいて凄く凄く辛かったです。怖かったり嫌な話って言うのでは決してないんです。あまりにも自分に当てはめられるというか・・・
それでも2人の気持ちに共感は出来るけど、双方の親は親としては失格ですよね。
将春の30年経っても初恋をしてるような態度も問題だけど、真紀子の親は父親も母親もどうしようもない。子供は親の所有物じゃないんです。思い通りに動かせる機械じゃないんです。親から逃げて良かったです。
親から育て方を間違えたなんて言われたら、私は生きていけません。
存在していることを否定されたように感じるから。
真紀子の嫌われたくないという想いとか、ちゃんと言いたいことが言えなくてたどたどしくなっちゃうのとか、凄くよく分かります。私もそう。
言えないまま言いなりになって生きてきて、自立しなければと思って自立しようとしても阻まれる。みたいな。
私は絵波は苦手です。嫌いです。
人を見下して、でも器用で人をとりなすのが上手くてウケが良くて。えぇ、嫉妬です。
私は真紀子や文と同じで不器用で甘えられなくて失敗ばかりだから。
でも、私は私のままでいいんだってようやく思えてきたところです。だから、真紀子や文もそう思って前を向いて行ったら良いなと思うラストでした。
私はそれで十分だったのだけど、真紀子にとってはあの不思議な現象が必要だったんでしょうね。凄く辛いでしょうけど…。

〈講談社 2015.1〉H26.1.28読了