炎立つ 四 冥き稲妻 (講談社文庫)炎立つ 四 冥き稲妻 (講談社文庫)
著者:高橋克彦
講談社(1995-10-15)
販売元:Amazon.co.jp

仇の子となり奥州藤原氏の栄華を開いた忍ぶ男の戦い。安倍が滅び、出羽の清原一族が治めることとなった奥六郡に藤原経清の妻結有は忘れ形見の清丸とともに留まっていた。清原の嫡子武貞の妻としてである。亡き兄と夫の志を胸に秘め敵方の一族として忍従の戦いを続ける母子の前に源義家が陸奥守として現われる。清原一族の確執が「後3年の役」の嵐を呼び起こす。

ようやく、舞台「炎立つ」の時代である4巻目を読みました。読むのが本当に辛かったです。初め東北はたなぼたで得ることができた清原一族が治めていました。経清の妻結有は憎き相手の清原へ嫁ぎ、清衡とともにいわば人質のような形で21年を過ごします。結有と清衡の耐え忍ぶ生活は本当に辛いという言葉では言い表せないほど過酷だったと思います。あまりにも長すぎる…
だからようやく時が来たと思ったときはこちらも胸が熱くなりました。
だからこそ、家衡の存在が邪魔でしょうがなかったです。本人に棟梁となる器もないのに、家衡のバックには清原一族がいるということからなかなか攻め込めなかった清衡たち。でもそれを家衡は自分の力だと過信し勘違いしたまま生きていってしまったのでしょうね。
この家衡を健君が演じなければ、私は家衡をただ憎らしい人間としか思わなかったと思います。(というか健君がそもそも出なければ読みもしなかったのだけど←そこは置いておいて)
健君がこれほど自分の役を愛おしいと思ったことはないと言った言葉を頭に思い浮かべながら読んでいました。家衡は私利私欲のためにしか動かないし清衡のことは最後まで見抜けず甘く見たまま、自分で采配をすることはなく、自分の名を名乗らずプライドだけ高いまま死んでいきました。
それでも、家衡の境遇を考えたら、完全な悪とは言えません。
この小説を読んでいて、私は鉈切り丸の範頼を思い出しました。
家衡とあの物語の範頼は頭の回転の良さも性格も全然違うけど、でも誰からも心の底から愛されることはなく、こうすることでしか生きることが出来なかったっていう境遇がにているかな。と。
家衡は結有が清原に従いますという証を出すためだけに生まれた子どもですよね。清原だって、結有のことをどこまで信じていたのか分からない。
結有も家衡を庇ったりしていましたけど、やはり慚愧の念の部分が大きかったんじゃないかな。産んでしまってごめん…っていう。
家衡のことをちゃんと理解していたのは、清衡だったのではないかなと思いました。
それにしても、清衡が楽土を築き上げるのにこれほどまでの犠牲を被っていたとは思いませんでした。これからようやく奥州藤原氏の時代が来ますね。
最終巻は義経が出てくるのでしょうか。おそらく次で滅びてしまうのだと思いますが、最後まで読んでいきたいと思います。

〈講談社 1995.10〉H26.9.6読了