スペードの3スペードの3
著者:朝井 リョウ
講談社(2014-03-14)
販売元:Amazon.co.jp

ミュージカル女優、つかさのファンクラブ「ファミリア」を束ねている美知代。大手化粧品会社で働いていると周りには言っているものの、実際は関連会社の事務に過ぎない彼女が優越感を覚えられるのは、ファンクラブの仕事でだけ。ある日、美知代の小学校時代のクラスメイトが「ファミリア」に加盟する。あっという間に注目を集めた彼女の登場によって、美知代の立場は危うくなっていく。美知代を脅かす彼女には、ある目的があった。
華やかなつかさに憧れを抱く、地味で冴えないむつ美。かつて夢組のスターとして人気を誇っていたが、最近は仕事のオファーが減る一方のつかさ。それぞれに不満を抱えた三人の人生が交差し、動き出す。
待っているだけではなにも変わらない。私の人生は私だけのもの。直木賞作家朝井リョウが、初めて社会人を主人公に描く野心作!

う〜怖い怖い怖い。怖いよー。
特に美知代の章が怖かった〜。小学校時代の心理は読んでいて辻村作品のような心をえぐられるような感じを味わいました。(辻村さんも帯書かれていたんですね)
カラクリは多少気づきましたけれども、どちらの気持ちもものすごくリアルで読んでいて本当に怖かったです。朝井さん若いし男性なのにどうしてこんなにわかるの…
分かっているのに何度か女性作家さんが書かれている錯覚に陥りました。
美知代に共感は出来なかったな。こういう同級生は私の近くにはいなかったけど近くにいたとしても多分好きにはならなかったと思う。
むつ美は卑屈にはなっているけどそれでも自分を変えようと足掻いてもがいている女の子。本当に努力したんだろうなということが分かる。むつ美には素直にエールを送りたいと思いました。
つかさの心境は全く経験したことがないことだから共感は得られなかったけど、でもこういう理由で芸能界にいる人ってきっといると思う。別に大きな物語がなくったって良いと思う。またもがいて這い上がってほしいなと思いました。
「革命なんて起きない」という言葉がずっと胸に突き刺さっています。
あ〜…怖い。怖い。それでもこんな私でも変われるかな。なんて思わせてくれる作品でした。

〈講談社 2014.3〉H26.5.27読了