エール!  2 (実業之日本社文庫)エール! 2 (実業之日本社文庫)
著者:坂木 司
実業之日本社(2013-04-05)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
バイト君の教育、クライアントの不正、育児と仕事の両立…働く女性を取り巻くさまざまな問題のゆくえは!?スイミングインストラクター、社会保険労務士、宅配ピザ店店長、遺品整理会社社員、ラジオパーソナリティ、メーカーのOL。六人の女性を主人公に、ミステリー、ファンタジー、ちょっぴりサスペンスと、多彩な六話を収録するアンソロジー。オール書き下ろし。
坂木司「ジャグジー・トーク」(スイミングインストラクター)
水生大海 「五度目の春のヒヨコ」(社会保険労務士)
拓未司 「晴れのちバイトくん」(宅配ピザ店店長)
垣谷美雨 「心の隙間を灯で埋めて」(遺品整理会社社員)
光原百合 「黄昏飛行」(コミュニティFMパーソナリティー)
初野晴 「ヘブンリーシンフォニー」(OL)

お仕事小説シリーズ第2弾です。
1の時も思いましたけど、働く女性がテーマだからか凄く共感できるところがたくさんあって、読んでいて頷くところがたくさんありました。
私はバリバリ働いているわけじゃないけど、でも元気をもらえた作品です。では順番に感想をば。
「ジャグジー・トーク」いいなーこの坂木さんの雰囲気。大好き。水泳と子供が好きでも、好きだけではできないことがたくさんあると思う。だから、沙也は本当に凄いと思う。技術だけが凄ければいいというわけにはいかないのが人とのかかわりで。大岡君の雰囲気も変わってよかった。
「五度目の春のヒヨコ」社労士になるために何年も勉強していた人を知っているので大変な仕事だなというのは分かりました。でもどんなに凄い資格を取っていても、若い女性はなめられるんですよねー。知ってます。雛子も今回で痛い目をみただろうから、ここから強くなっていってほしいです。
「晴れのちバイトくん」バイトの育成って大変ですよね。私も年上の人をトレーニングしたことがあります。大学生の時に…。ここまであからさまな人も少ないだろうけど。この「オセロ・ピザ」が他の作品にも登場したのが面白かったです。
「心の隙間を灯で埋めて」この作品が一番ずしっときました。仕事もそうですが内容が。主人公の星湖は始めはSEとして働いていて、結婚出産を経験して印刷屋でパートをして、夫が亡くなって遺品整理会社に働き始めるのだけど、男性に比べて力仕事は出来ないし、主婦だったから社会人としてブランクがあるし、新しいことを始めるとすべてが最初からやり直しだと思ってました。でも、最後にそれは違うのだと気づきます。今まで生きてきて経験してきたことが今に生きていると感じ、自分はダメ人間じゃないかも…と思います。
私も同じように思っていました。仕事を経験しても転職して違う仕事をすればまた一からの出直し。それを繰り返していつの間にか29歳になっていた自分。私は一体何をしてきたのか。自分なりに頑張ってきたつもりだったけど、全然頑張っていないダメな人間だって。時々、ふと無性に自分を罵りたくなった時もありました。でも、この作品を読んで、改めてそうじゃないんだって思いました。とある仕事を丸投げで頼まれたとき、1番最初の職場でしていた経験から次に何をすればいいのかが分かり、自分で考えて仕事を進めることが出来たし、職場の人から意味の分からない問い合わせが来たけど、詰めて詰めて聞いて言っている意味が分かり、それは前職の図書館司書でレファレンスをしていたから導けたのだなと思ったり。そうだ、私も「人生に無駄はない」って思える。と思ったら、何だか涙が出てきそうでした。私はまた4月から新しい職場になるけど、今まで経験したことは決して無駄なんかじゃなかったと思えます。それを感じさせてくれたこの作品に感謝したいです。
「黄昏旅行」パーソナリティって大変な仕事だろうなぁと思って読んでいました。それでも誇りを持って仕事をしている姿が素敵です。局長との会話が凄くよかった。言葉の掛け合いが最高です。
「ヘブンリーシンフォニー」OLの仕事の物語がファンタジーとは!びっくりだ。でも、良かった。凄く凄くよかった。ゆかりの日常の鬱々とした想いも分かる。それでも自称登山家にとってはそれこそが求めていた日常で。登山家の「平凡で、波のない人生でも、喜怒哀楽はあったのだろう?」という言葉。私もその言葉を胸に、平凡だけど幸せな日々を過ごしたいと思いました。

〈実業之日本社 2013.4〉H26.3.12読了