伊藤くん  A to E伊藤くん A to E
著者:柚木 麻子
幻冬舎(2013-09-27)
販売元:Amazon.co.jp

こんな男のどこがいいのか。
ほろ苦く痛がゆい、著者会心の成長小説。
それぞれに魅力的な5人の女性を振り回す、伊藤誠二郎、27歳。
見た目はいいが、自己中心的。自分は傷つくくせに、人は平気で傷つける。
彼女たちが伊藤に抱く恋心、苛立ち、嫉妬、執着、優越感―。
A 伊藤に長い間片思いするが、粗末に扱われ続けるデパート勤務の美人
B 伊藤からストーカーまがいの好意を持たれてブチ切れる、バイトに身の入らないフリーター
C 伊藤の童貞を奪う、男が切れたことのないデパ地下ケーキ店の副店長
D 処女を理由に伊藤にふられるも、売れっ子放送作家を初体験の相手に選ぶ大学職員
E 伊藤が熱心に勉強会に通う、すでに売れなくなった33歳の脚本家

柚木さんの作品は大好きなので、新刊が出たら読んでいるのですがこの作品はあらすじを読んで絶対にイライラしそうだなと思って読むのをためらっていました^^;
それでもやはり1度気になったら読んでみたいという欲が止まらず、今回読みました。
予想はしていましたけど、まーーーー伊藤のダメ男ぶりがハンパないですね。口だけの男ですよ。単なるひ弱ですよ。とんでもないクズ男ですよ。
女性たちの個性も全然違いましたが、どうしてそろいもそろってこの男に惹かれるのか、まーーーったくわかりませんでしたよ。
特に最初の智美なんてもったいないにもほどがあるくらいもったいない!あなたは幸せにならなきゃだめよ!って思いましたよ。私が言うのもなんだけど。
だから智美の最後にはほっとしました。そのあとの修子とのリンクもとてもよくてBを読み終えたところまではほんわかした気持ちでいました。
でも聡子と実希の章は何ともはや…女性側もあまり好きになれなくて、でも伊藤側になることは絶対にないけども読み終えた後のもやもや感がハンパなかったです。2人はそれでも伊藤と係わったことで本性をさらけ出して、元通りにはいかなくてもまた戻ることはできるのかなぁなんて思いました。
そして最後。最後だけちょっと雰囲気が違いましたね。伊藤の根本というかまとめというか。伊藤の主張もありましたけどまーーー薄っぺらい!お金持ちのボンボンだからそういうこと言えるのよ、せいぜい一生そうやって生きてとっとと死ねばいい!と思いました。
…すみません、暴言吐きました。
伊藤の言動全てが吐気がしそうなくらい気持ち悪くて^^;いやーここまで人の事を嫌いになりながら小説を読んだのは思い出せないくらい久しぶりです。
周りの女性たちは変わっていったけど、伊藤はきっと一生変わらないんだろうな。それでもういいから、みんな関わっちゃだめだーー!!と思って読み終えました。

〈幻冬舎 2013.9〉H26.3.6読了

以下、小説と関係あるんだかないんだかの話。

もともとこの本を読む気にならなかったのですが、見ようと思ったのは去年10月に「Some Girl(s)」を観た後。
あれ?この主人公もしかして「男」に似てる?なんて思ったのがきっかけ。
読んでみてびっくりしました。同じではもちろんないんですけど、日本版「Some Girl(s)」を読んでいるかのようでした。
伊藤は顔が整っていて声が甲高くて口が上手くてシナリオライターを目指している。「男」は小説家だったけど。
女性たちもまあどちらも個性的だから雰囲気がかぶる女性もいましたし、とにかくどっちの男もクズ呼ばわりされているし^m^
女性に対しての扱いや自分のプライドの高さがそっくりで。健君に変換したくないのにしちゃうような感じでしたよ、もう。
でもそれは柚木さんに失礼だから違う違うと思って読みましたけども。
「男」の方はどちらかというとプライドを守るために女性たちと係わっていたからクズケンや莉桜のタイプかな。
伊藤は自分が傷つきたくないから賭けに出ない。ずっとチャンスをただただ狙っている。
伊藤はそう思っているけどもともとは莉桜がこの伊藤という人を作り上げたのだとわかって戦慄(書評で「クリーチャーが作られた」って書いてる人がいて吹いた←わかる人にはわかるはず)しました。
あとEの話で驚いたのは伊藤が「4人の女性たちが登場するシナリオを描こうと思う」と言ったこと。おいおい。
そして最後の伊藤の告白(若干泣きながら)おいおい!
もうデジャブかと思いましたよ(こっちも分かる人にはわかる)
勝手に小説と舞台を一緒にしてしまって双方にはお詫び申し上げますが、読んでいる私はどちらも思い出して面白かったです。
もしこの小説がドラマ化されるなら、映像化は嫌いだけどあの子に演じてほしいな。腹が立つくらいのクズ男を演じてほしいです←
以上、小説と関係あるんだかないんだかの話でした。

意見には個人差があります←