UNTITLED (一般書)UNTITLED (一般書)
著者:飛鳥井千砂
ポプラ社(2013-08-06)
販売元:Amazon.co.jp

31歳の桃子は実家暮らしで未婚。自分の中で培ってきた“ルール”を厳格に守り、家族や勤めている会社の人間にも一切スキを見せることなく暮らしている。ある日、桃子の携帯に弟の健太から2年ぶりに連絡が入る。子供の頃から迷惑をかけられっぱなしで、「一家の癌」だと思っている弟からの連絡は意外な内容だった…。ベストセラー『タイニー・タイニー・ハッピー』の著者が功妙に描きだす、ありふれた家族の真実のカタチ。

飛鳥井さんの作品はたぶんアンソロジーでは読んだことがあるのですが長編を読んだのは初めてでした。
読んでいて息苦しかったです。それはきっと桃子の生き方がだと思います。
こんな生き方をしていたら大変だろうなと思います。
雅美が人への許せる沸点は低いのに自分のことは鈍いというのはグサッときました。きっと、私もそうだから。さすがに桃子ほどではないと思うけど。
自分はしっかり不倫しているのに家族にはばれていないからと正当化しているのも嫌だったけど、でも桃子のことは嫌いにはなれなかった。
ここまではいかないけど、私はきっと桃子に近い。
親の言いつけを守って、わりかしいい子でいたつもり。それでもおとなになるにつれて子供のころは「いい子」だった部分は良いだけとは限らない。
それは私も大人になるにつれてわかってきたことで、健太ほどではないけど、私も兄妹のことで悩んだことがたくさんある。「一家の癌」とまではいわないまでも「一家の問題児」くらいには思ってた。そして、そんな兄弟をみて、私はこんなことはない、迷惑をかけてないと優越感に浸っていたことも多分ある。
でもその想いはずっと抱えていちゃダメなんですよね。大人なんだから。
だから桃子が家族全員から意見を受けているとき、自業自得だと思った反面、桃子が可哀想でしょうがないと思う部分もあって。
最後の家族のシーンは、私、泣きながら読みました。私もこう思われているのかもなぁなんて思ったりして。ちょうど似たような(ここまで凄くはないけど)状況になっていたから尚更。
だからこそ、私は答えが知りたかった。桃子が家を飛び出した後の行動で光を見出したかったのに、あの終わり方は私はちょっと茫然としてしまった。
桃子は頑なな部分を脱ぎ捨てて、雅美に心を開けばよかったのにね。雅美は桃子のことを佐野よりも、家族よりもわかってくれるかも知れなかったのに。

〈ポプラ社 2013.8〉H25.9.15読了