月下上海月下上海
著者:山口恵以子
文藝春秋(2013-06-21)
販売元:Amazon.co.jp

スキャンダルを逆手にとり人気画家にのしあがった財閥令嬢・八島多江子は、戦時統制下の日本を離れ、上海に渡った。謀略渦巻く魔都・上海で、多江子が出会う四人の男たち。憲兵大尉・槇庸平、民族資本家・夏方震、医学生ながら抗日運動に身を投じる黄士海、そして多江子の前夫・奥宮瑠偉。いま、運命の歯車が回り始める―。第20回松本清張賞受賞作!

松本清張賞受賞作ということで手に取りました。最近この賞は相性が良いなと思いまして^^と言っても読んだのは2冊目ですけども。
そして読んでみて、やはりよかったです。
始めは時代背景が昔だったので入り込むのに時間がかかった事と内容が難しくて^^;読み進めるのに時間がかかったのですが、途中からはもうあっという間でした。
何だか映画か何かを見ているようなその時代の雰囲気が頭の中に描かれるようなそんな感覚でした。
とにかく主人公の多江子が魅力的です。あらすじが「スキャンダルを逆手に取り人気画家にのし上がった財閥令嬢」から始まりますから^^;傲慢なお嬢様なのかななんて思いましたけど、全然そんなことはなくて聡明で優しい女性だと思いました。でも芯がめちゃくちゃ強くて強いだけではない魅力的な女性だったから敵すらも味方にしてしまうものがあったんでしょうね。
真木も夏も士海も結局は多江子に魅了されていましたから。
ただ、瑠偉だけは何だろうなぁ…というもやもやが残る感じです。離したくないからと多江子がやってはいけないことまでやってしまったことが原因ではあると思うけど、それでも多江子を想うと切なくてしょうがなかったです。
最後の最後までそこまで大きな展開があるわけではありませんでしたが、ラスト1ページまで読み終えた後にずっと余韻に浸っていたいと思う作品でした。

〈文藝春秋 2013.6〉H25.8.22読了

以下、結構ねたばれなあらすじです^^;
第二十回松本清張賞受賞。スキャンダルを逆手にとり人気画家にのしあがった財閥令嬢・八島多江子。謀略渦巻く戦時下の上海で、多江子が愛する運命の男たち。
昭和17年10月、八島財閥令嬢にして当代の人気画家・八島多江子は、戦時統制化の日本を離れ、上海にやってきた。そこで、招聘元である中日文化協会に潜入していた憲兵大尉・槙庸平から、民族資本家・夏方震に接近し、重慶に逃れた蒋介石政権と通じている証拠を探すように強要される。「協力を断れば、8年前の事件の真相をマスコミに公表する」8年前、多江子が夫・瑠偉とその愛人によって殺されかける有名な事件が起きた。愛人は取り調べ中に自殺し、瑠偉は証拠不十分で釈放されたものの、親元の伯爵家から除籍され、満州へ追われた。そして奇跡的に一命を取り留めた多江子は、スキャンダルを武器に人気画家へのし上がった。だが、その真相は、愛人と外地へ駆け落ちしようとした瑠偉を許せなかった多江子が、他殺に見せかけて自殺を図ったのだった。槙は何故か、その秘密を嗅ぎつけていた。不本意ながらも夏方震に近づいた多江子は、その人間的な大きさに惹かれて行く。夏もまた、首と心に大きな傷を持った多江子の強さと孤独に惹かれ、心から愛するようになる。やがて夏の求愛に心を開いた多江子は、槙にきっぱりと任務を断り、夏の胸に飛び込み、共に生きる決心をする。だが、多江子の何気なく漏らしたひと言からヒントを得た槙は、工作員を捕え、夏をスパイ容疑で逮捕してしまう。多江子は槙の利己主義につけ込み、莫大な謝礼と引き替えに、夏を憲兵隊本部から連れ出す取引をする。そして夏を実家の八島海運の貨物船で密航させ、上海から逃がす。だが、成功に油断した多江子は槙に犯されてしまう。槙の真の狙いが八島海運にあると察した多江子は、命懸けの対決を余儀なくされる。そして……。