さきちゃんたちの夜さきちゃんたちの夜
著者:よしもと ばなな
新潮社(2013-03-29)
販売元:Amazon.co.jp

失踪した友人を捜す早紀(さき)。祖父母秘伝の豆スープを配る咲(さき)。双子の兄を事故で亡くした崎(さき)の部屋に転がり込んだ、10歳の姪さき……。いま〈さきちゃん〉たちに訪れた小さな奇跡が、かけがえのないきらめきを放つ。きつい世の中を、前を向いて生きる女性たちに贈る、よしもとばななの5つの物語。

よしもとさんの本を読むのは久しぶりだなーと思って調べてみたら読むのは9年振りだったみたいです。びっくり。今までも読もうと思った作品は何冊もあったのですが。
この作品は以前「王様のブランチ」で紹介されていて実際にばななさんが出演されて作品についてお話しされていたのを聴いて興味を持ちました。
良かった。どの作品もやさしくて素敵な作品ばかりでした。
「スポンジ」早紀と飯岡が作家で早紀が編集者として担当していた高崎を捜しに行く話です。早紀が結婚して子供が出来て2人とは離れてしまっていたけど、3人が集まって一つの作品を作り上げる雰囲気が好きでした。最後も諸々良かった。
「鬼っ子」紗季の伯母が亡くなったと知り紗季は伯母が最期に住んでいた宮崎の一軒家に向かう。そこにはたくさんの鬼っ子たちが。そして紗季へあてられた手紙に、近所に住む黒木さんがいました。親兄弟から離れてたった一人で生きてきた伯母さん。世間知らずで人に迷惑をかけるような人ではなくて、たくさんの人に支えられ支えてきた人なんだと思ったら何だか私まで温かい気持ちになりました。
「癒しの豆スープ」祖父母が亡くなったことで毎週土日の午前中に近所に無料でふるまっていた豆スープがなくなった。そこで離婚した咲の父母が復活させようと奮闘します。1度離れてしまった夫婦が離れてから再び話をし、共同作業をしていくことでいろんなことを振り返ります。離れて分かることもたくさんあるんだろうなーなんて読んでいて思いました。それは咲が大人になったからというのもあるんだろうけど。咲が父親の新しい奥さんに逢いに行ったところが好きでした。
「天使」保育所に勤める沙季は近くに出来たビストロに通うようになり、そこに勤める鈴木さんと付き合うようになります。いきなり元奥さんに罵倒されるところから始まるので、不倫なのかと思ったらそういうわけでもなく。読んでみたら奥さんが別れたことを後悔して僻んでるのかな?なんて思ったのだけど。鈴木さんの天使論はびっくりしたけど、でも沙季が人間だと分かっても変わらず愛している姿が好きでした。
「さきちゃんたちの夜」双子の兄を失った崎とその兄の娘のさき。2人の一晩だけのおとまりがかわいかったです。私もきっといつか一人が楽で自分の生活領域に人が入ってこないでほしいって思うような気がするのだけど(あくまで予想)そう思ったときこそめんどうくさいと思うことが心地よく感じたりするのかなぁなんて思ったりしました。
ほしよりこさんの装画も素敵です。

〈新潮社 2013.3〉H25.7.21読了