太陽の庭 (集英社文庫)太陽の庭 (集英社文庫)
著者:宮木 あや子
集英社(2013-02-20)
販売元:Amazon.co.jp

一般人には存在を知られず、政財界からは「神」と崇められている、永代院。地図に載らない広大な屋敷に、当主の由継を中心に、複数の妻と愛人、何十人もの子供たちが住まい、跡目をめぐって争っていた。そんな中、由継の息子・駒也は、父の女・鞠絵に激しく惹かれてゆく。許されぬ愛は、やがて運命の歯車を回す。破滅の方向へ―。「神」と呼ばれた一族の秘密と愛憎を描く、美しく、幻想的な物語。

凄いなぁ。この世界観。宮木さんならではですね。
現実の世界なのだけどどこか異世界のような浮世離れした場所、永代院。
ここで生きる子供たちは月に1度外へ行く以外は全てこの土地の中だけで過ごす。
学校へも行かず、中に住む人たちだけの小さな世界で生きる。
物凄く閉鎖された空間で生きている人たちはどこか狂気じみてました。
駒也も葵も和琴も鞠絵も、どこかおかしかった。
それでもこの封鎖された空間を楽しんで読んでいたのだけど、表題作でいきなり現実がやってきて、永代院が現実味を帯びてきて、柿生と山下が永代院とはなにかと探っている所はまだ面白かったのだけど、それ以降がちょっと現実的すぎて悲しかったかな。
泉水の言うとおり、内部では人が平気で死んでいくけど別に他の一般の人たちには迷惑をかけているわけではなかったと思うのだけど…
だから破滅の方向へ進んでいく姿が私はとても悲しかったです。
でも、形は悪かったかもしれないけど破滅の道へ進んで行ったのが良かったのかもしれないですね。骨肉の争いは男だろうと女だろうと醜くて痛々しくて、誰かが勝つのかもしれないけど、何も生まれないのだなと感じました。

〈集英社 2009.11
  集英社文庫 2013.2〉H25.5.16読了