ことりことり
著者:小川 洋子
朝日新聞出版(2012-11-07)
販売元:Amazon.co.jp

12年ぶり、待望の書き下ろし長編小説。
親や他人とは会話ができないけれど、小鳥のさえずりはよく理解する兄、そして彼の言葉をただ一人世の中でわかるのは弟だけだ。小鳥たちは兄弟の前で、競って歌を披露し、息継ぎを惜しむくらいに、一所懸命歌った。
兄はあらゆる医療的な試みにもかかわらず、人間の言葉を話せない。青空薬局で棒つきキャンディーを買って、その包み紙で小鳥ブローチをつくって過ごす。
やがて両親は死に、兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。弟は働きながら、夜はラジオに耳を傾ける。静かで、温かな二人の生活が続いた。小さな、ひたむきな幸せ……。
そして時は過ぎゆき、兄は亡くなり、 弟は図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて持ち歩く老人、文鳥の耳飾りの少女と出会いながら、「小鳥の小父さん」になってゆく。世の片隅で、小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつしみ深い一生が、やさしくせつない会心作。

久しぶりに小川さんの作品を読みました。
そして描き下ろしは12年振りなんですね。そこまで前の作品は読んだことがないです…すみません。
小川さんの作品は文章に温かさを感じます。読んでいるだけで心が洗われるようです。
兄弟の、つつましくも幸せな生活。読んでいて私も居心地がいいなと思いました。
でも、お兄さんが亡くなったことで弟は一人となり、様々な出会いをし、また別れていきます。一人になってからの弟の境遇が、弟が望んでいないのにめまぐるしく変わっていて、読んでいて切なくて悲しくなりました。
鳥籠の中にいるメジロは、兄弟の生活や世界観を表していたのかなと思います。
狭い狭い2人だけの世界。でも、隔離されているわけではなくて鳥籠の中で自由に過ごしているんですよね。
出来ない事なんですけど、できれば兄弟仲良くいつまでも暮らしていてほしかったなと思います。
兄弟は2人きりのようでしたけど、幼稚園の名誉園長さんや青空薬局の店主はちゃんと2人を見てくれていましたよね。理解してくれる人がいるって大事で素敵な事だと思いました。青空薬局の店主は、小父さんの死を悲しんだのでしょうか。

〈朝日新聞出版 2012.11〉H24.12.18読了