光圀伝光圀伝
著者:冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング)(2012-09-01)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

オススメ!
なぜ「あの男」を自らの手で殺めることになったのか―。老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎で、誰にも語ることのなかったその経緯を書き綴ることを決意する。父・頼房に想像を絶する「試練」を与えられた幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れ回る中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて学問、詩歌の魅力に取り憑かれ、水戸藩主となった若き“虎”は「大日本史」編纂という空前絶後の大事業に乗り出す―。生き切る、とはこういうことだ。誰も見たこともない「水戸黄門」伝、開幕。

ネタバレあります

読むのに時間がかかりました…。750ページ…本は分厚いし重たいし、ほぼ通勤中しか読まないので辛かったです^^;
でも、本当に面白かったです。
水戸光圀と言えばやはりテレビで見た「水戸黄門」のイメージしかなく、おじいちゃんで全国行脚してるっていうことしか認識がありませんでした。でも、最初からおじいさんだったわけではもちろんないし、全国行脚だってしてなかったんですよね。
なので、ちゃんとした?史実にのっとったこの作品で、光圀の事を少しでも知ることが出来たと思います。
光圀は三男だったんですね。それなのに自分が世子に選ばれた。兄を差し置いて。どうして自分が。その想いを何十年も抱えていて、根がとてもまじめないい子だったんだろうなと思います。誰も答えを教えてくれないからぐれて夜遊びに走っちゃったんですね^^;
どこまで史実なのかはもちろんわかりませんが、若いときに沢庵宗彭や宮本武蔵に出会うことが出来て本当に良かったと思います。10代20代の光圀は常にイラついているようにしか感じなかったので。また読んでも読んでも光圀が若いままだったから全然読み進んでいないような絶望的な衝動にも駆られました^^;
「大義のため」に、光圀は大きな展望を持って藩主となります。その大義のために、奥さんである泰姫をも巻き込んで叶えようとします。泰姫は若かったですが素晴らしい方でした。光圀の想いをちゃんと汲み取っていて。
そして左近もとても素敵な女性でした。特に年を取ってからの左近が好きです。光圀に対してもズバズバ物言いをするのが気持ち良かったです。この2人が一緒になってほしいなと思っていたけど、そんな簡単にはいかないですね・・・
兄頼重も素晴らしい人でした。光圀が兄を嫌っていたのにそれをもすべて受け止めていました。自分が藩主になるはずだったのに、それをも受け入れていて。そして光圀の大義を知り、初めは激昂するも光圀の強い想いを知ったのか受け入れます。
光圀は周りの人にも恵まれていたんだなと思いました。
そういえば、安井算哲もちょいちょい登場しました。保科正之に碁打ちを吟味してほしいと言われ、対面した算哲。初めは頼りない若造だったのに、最終的には日本独自の暦を創りあげ、光圀も興奮している姿に何だかうれしくなりました。
長い物語でしたが、水戸光圀という人物を知ることが出来て良かったです。「天地明察」との時代もかぶっていたので出てくる人物を違う視点から読み取ることもできて面白かったです。
何より、水戸光圀という人物が魅力的でした。いい読書が出来たと思います。
冲方さん、次は清少納言をテーマにする予定だそうですね。楽しみにしています。

〈角川書店 2012.8〉H24.10.7読了