金木犀二十四区金木犀二十四区
著者:三木 笙子
角川書店(角川グループパブリッシング)(2012-09-01)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
樹齢千二百年の金木犀が見守る昔懐かしい街。そこで起こる怪異とは―?かつての大君が愛した花の都の端にひっそりと存在する一帯、“金木犀二十四区”。ここで祖母の初と和花屋を営む木下秋のもとに山伏・佐々木岳史と天文台職員・堀田敦志がやってきた。街に異変をもたらす隕石を回収しにきたという岳史たちに秋は半信半疑ながら協力しはじめる。だがその矢先「森林化」という怪現象が起こり、脅威が街を襲い始める…。

好きだ…好きです。三木さんの書かれる作品の雰囲気が本当に好きです。三木さんの出されている本は全て読んでいます。そして今回は〈帝都探偵絵図〉シリーズ以外の作品。このシリーズが大好きなので、違う作品だとどんな感じなのかなと楽しみにしていました。そしてやっぱり、この人の書かれる作品は好きだなぁーと思いました。
数日前に金木犀二十四区内に隕石が落下し、その後とある家庭で「森林化」が起きた。それは、隕石が落下した時に現れるという天狗のせいなのか。そしてその天狗とはどういう者なのか。事件自体は割と早目に解決するのですが、後半意外な展開を見せていきます。
舞台の和花屋という存在も素敵だし、山伏や天文台職員というのも素敵です。
そして〈帝都探偵絵図〉シリーズもそうなんですけど、少し耽美っぽい感じが好きです。腐女子にはたまりませんー。
唐突な出会いから、2週間くらいの出来事なんですけど、この3人が徐々に信頼関係を結んでいく姿が読んでいて好きでした。
秋はただ住まいを提供しているだけの存在だったのに、突然騒ぎの中心となって巻き込まれることになります。それからの3人のそれぞれの想いの交錯具合がもどかしくてたまらなかったです。
特に秋と岳史の信頼関係は互いの境遇を話せるまでになっていたのに、ある疑惑によって岳史が呼び捨てから「秋さん」と呼ぶようになったのが読んでいるこちらまで悲しくなりました。
秋の境遇も、岳史の境遇も、大人のワガママに翻弄されていて読んでいて腹ただしかったです。それでも、2人は真っ当に育って成長して誇りを持てる仕事を見つけて、逞しいなと思いました。
初の存在も大きかったです。初の作る料理がとても美味しそうでしたし、きっと見た目はおばあちゃんなんだろうけど、言動が少女のようでとても可愛らしかったです。そしてどこまで真相を知っているか分からないけれど、最後の初の何気ない言葉に驚かされました。
金木犀二十四区という言葉が素敵で、またその区域も本当に素敵な場所なんだろうなと読んでいても感じました。秋にも初にも、この場所でずっと穏やかに生活していってほしいなと思いました。
装丁もとても素敵。図書館で借りたけど、買おうか考え中です。〈帝都探偵絵図〉シリーズも然りなのですが。

〈角川書店 2012.9〉H24.10.2読了