虚像の道化師 ガリレオ 7虚像の道化師 ガリレオ 7
著者:東野 圭吾
文藝春秋(2012-08-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

東野圭吾の代表作、「ガリレオシリーズ」の最新短編集。
ビル5階にある新興宗教の道場から、信者の男が転落死した。その場にいた者たちは、男が何かから逃れるように勝手に窓から飛び降りたと証言し、教祖は相手に指一本触れないものの、自分が強い念を送って男を落としてしまったと自首してきた。教祖の“念”は本物なのか? 湯川は教団に赴きからくりを見破る(「幻惑(まどわ)す」)。突然暴れだした男を取り押さえようとして草薙が刺された。逮捕された男は幻聴のせいだと供述した。そして男が勤める会社では、ノイローゼ気味だった部長が少し前に自殺し、また幻聴に悩む女子社員もいた。幻聴の正体は――(「心聴(きこえ)る」)。大学時代の友人の結婚式のために、山中のリゾートホテルにやって来た湯川と草薙。その日は天候が荒れて道が崩れ、麓の町との行き来が出来なくなる。ところがホテルからさらに奥に行った別荘で、夫婦が殺されていると通報が入る。草薙は現場に入るが、草薙が撮影した現場写真を見た湯川は、事件のおかしな点に気づく(「偽装(よそお)う」)。劇団の演出家が殺された。凶器は芝居で使う予定だったナイフ。だが劇団の関係者にはみなアリバイがあった。湯川は、残された凶器の不可解さに着目する(「演技(えんじ)る」)。
読み応え充分の4作を収録。湯川のクールでスマートな推理が光る、ガリレオ短編集第4弾。

ガリレオシリーズ第7弾です。
今回嬉しかったのは湯川&草薙コンビが戻ってきたことです。前作まで内海が主で草薙が結構陰に隠れちゃっていたので。だから嬉しい―!
司書同士で昨日ガリレオシリーズの話をしていて「ドラマだからって別に女性を加えなくたっていいじゃないか!おっさん2人で良いじゃないか!」って言い合ってました^^;まあ、みんな小説は読んでいるけどドラマは見ていなかったので、偏った意見ですけどね。内海も読み慣れてきてはいたんですけど。でもやっぱりこのコンビだと嬉しい。8も楽しみです。…それにしても、どうして今回からガリレオ7とか8とかつくようになったんでしょ。分かりにくいってクレームが来たとか?^^;
「幻惑す」最近こういう宗教的なものがテーマになること、多いですよね。どうして引っかかるんだろうと思ってはいるけど、何かきっかけがあったらきっとハマるんだろうな。そういうもんなんですよね。てっきり教祖が悪いのかと思ったらもっと悪い親玉がいたという。教祖が1番の被害者ですよね。自分が思うように生きていれば良かったのに。カワイソ。
「心聴る」ずっと幻聴が聴こえ続けるって嫌だなぁ。不倫は行けなことですけど、だからって殺される理由はありませんからね。ましてや不倫相手とかと全然関係ない人には。草薙を刺しちゃった人は本当に悪い人じゃなさそうでした。ただただ言い訳せず自分の非を詫びていました。これが差なんですよね。草薙と北原の差も同じ。北原は内海に対して本当にあからさまでしたもの。草薙に対しては対等だけどハナから上から目線で小ばかにしていましたよね。いるんですよね、若い女性に対して自分より下に見なしてエラそうにする人。最後は多少理解したようで良かったです。私の中での印象が最後まで変わりませんでしたけど。
「偽装う」何だか人情味あふれるラストで湯川らしくない感じでした。(失礼な)でもまあ、彼女が犯人なわけではないし、欲にまみれてその行動をとったわけではないから私もあのラストで良かったような気がします。石持さんの作品みたく殺人を犯しているのに逮捕されないというのとは違うし。←「真夏の方程式」での出来事がきっかけで湯川も人らしくなったのでしょうかね〜^m^草薙と湯川、結婚するとしたら早いのは草薙だと思うな。もはや早くないけど。
「演技る」最初から犯人が分かっているのかと思ったらやっぱり一筋縄ではいきませんでした。でも、トリックを考えた人は末恐ろしいですね。ある意味大女優になれるかも。何だろう…そこまで悪いことをしてないんですけど、背筋がぞぞっとします。
怖い怖い。

<文藝春秋 2012.8>H24.9.23読了