空飛ぶ広報室空飛ぶ広報室
著者:有川 浩
幻冬舎(2012-07-27)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
不慮の事故でP免になった戦闘機パイロット空井大祐29歳が転勤した先は防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。待ち受けるのは、ミーハー室長の鷺坂(またの名を詐欺師鷺坂)をはじめ、尻を掻く紅一点のべらんめえ美人・柚木や、鷺坂ファンクラブ1号で「風紀委員by柚木」の槙博己、鷺坂ファンクラブ2号の気儘なオレ様・片山、ベテラン広報官で空井の指導役・比嘉など、ひと癖もふた癖もある先輩たちだった……。有川浩、渾身のドラマティック長篇小説。

読みました。有川さんの作品なので多分航空自衛隊の話だろうなとタイトルから判断したくらいで内容は一切知らずに読みました。
この本を読んで思った事は、身近にある存在である自衛隊について私は本当に何も知らなかったんだなと思った事です。
確かに専門的な事は分かりませんが、それでも多少は知っているつもりでいました。でも知識としてはこの作品に登場する稲葉リカの最初の段階の知識くらいしか持っていないと思います。流石に陸軍とか海軍とか空軍とかそういうふうに呼びはしませんけど、でも陸自、空自、海自と呼ぶことは知らなかったですし…。
ブルーインパルスに関しても、私が最初にちゃんと知ったのは有川さんが書かれた「ラブコメ今昔」を読んだからでした。
友人の旦那が自衛隊勤務なので自衛隊のお祭りに行ったこともありますけど、それも友人を介してじゃないとそんな催しがあること自体知らないままでしたし。地元では苗穂、真駒内、丘珠、ちょっと遠くだと千歳に駐屯地(や基地)があるのに、本当に無知だなあと思います。そういえばかつて真駒内の駐屯地内で雪まつりが行われていたっけ。
それにしても自衛隊に批判的な人がそんなにいてそんな酷い考え方の人がいるということも読んでいて知りました。どうしてそんな考えが生まれるのでしょう。憲法9条の問題でしょうか?あぁ、本当に無知ですみません。
有川さんが最後に書かれていましたけど、本当に自衛隊に勤務していても普通の人と変わらないんですよね。ただ、覚悟だけが違うと。読んでいてそう思いました。
主人公の空井は小さい頃からブルーインパルスに乗ることが夢だったパイロット。しかし不慮の事故のため、すでに内示が出ていたにもかかわらず乗ることが出来ずに広報室へ異動となった不運な青年。そういう境遇だから、やさぐれてやる気がなくて荒れてる人なのかなと思ったらそんなことはなくて。ちゃんと丁寧に仕事をしていて私も読み始めた最初は違和感を感じていました。その事に関して後々書かれていくのでやっぱりそうだよねと納得。空井は自分を元パイロットだと自覚して前を向いた姿は素敵でした。パイロットになれなかったことを悔やんで過ごしていたら、パイロットではなくなった時点から余生になるという発言は結構重かったです。どうしても良かった頃の事を振り返ることって多いですから。空井は強いですね。
今回は連作短編のような形で広報室を舞台にそこに勤務する人たちの仕事や人間関係や葛藤も描かれていて良かったです。なので、比嘉も片山も柚木も槇も鷺沢も主人公と同じように身近?に感じられました。みんなそれぞれ強い意志を持って誇りを持って勤務しているのがかっこよかったなぁ…。
・・・と、ストーリーはとてもよかったのですが、恋愛部分は絶対に入ってくるんだろうなーと思い、どうしてもこの人とこの人がきっと互いに気になる存在になるんだろうななんて最初の段階で思ってしまって何だか恋愛部分だけは読んでてやさぐれました^^;
どうしたんだろう。有川作品の恋愛部分大好きだったのに。私が年を取ったのか心が汚れたのか枯れ果てたのか。今の気持ちの問題か、おっさん化してきているのか。それともリカの冒頭の強烈さが尾を引いていたのか^^;
まあ今回はそこまでベタ甘ではなかったので、この作品の中ではこのくらいの距離感が良かったのかなと思います。同じ女性としては第一希望の仕事は出来なくなってしまったけど今の仕事を誇りを持って一生懸命働いてほしいなと思ったので。
そして本編の後に書かれていた「あの日の松島」
この本は2011年の夏に刊行予定だったそうですが、自衛隊が舞台なのに震災の事を書かなくてどうする!という事で書き改め今年刊行されたそうです。本編を読んでも思いましたが、本当に有川さんは丁寧に取材されたんだろうなというのがところどころで伝わってきました。
去年私もテレビを見て自衛隊の方々が救助のために奔走している姿を何度も拝見しました。自分たちも家族がいるのに不眠不休で冷たいご飯を食べて救助に向かう姿は本当に感動しました。それでも自衛隊の方々はきっと空井のような考え方なんですよね。自衛隊を当事者にしないでほしいと。リカの取材はきっと有川さんが取材されたものなんですよね。
本当に相当の覚悟で仕事をされているんだろうと思います。頭が下がりっぱなしです。せめて、ちゃんと自衛隊の事を理解できるようになろうと思いました。

<幻冬舎 2012.7>H24.9.1読了