烏に単は似合わない烏に単は似合わない
著者:阿部 智里
文藝春秋(2012-06-24)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
松本清張賞を最年少で受賞、そのスケール感と異世界を綿密に組み上げる想像力で選考委員を驚かせた期待のデビュー作は、壮大な時代設定に支えられた時代ファンタジーです。
人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なのか?
あふれだすイマジネーションと意外な結末――驚嘆必至の大型新人登場にご期待ください。

元同僚だった司書にこの本面白いよ!とオススメされたので読みました。
うおー面白いー!面白いよー!と夢中で読みました。
20歳が書いたなんて信じられない。凄い才能ですね。
舞台は平安時代を思わせる雰囲気なのですが、実在の時代ではなくファンタジーでもあります。
世継ぎである若宮の妃は権力争いにしのぎを削る四家の中から選ばれます。あせび、浜木綿、真赭の薄、白珠。それぞれが若宮の妃になるために奔走します。
ただ女4人の闘いが繰り広げられるのだと思っていました。確かに闘いはありましたけどそれは茶番と言ってもいいほど、大きな問題ではありませんでした。后候補たちはみんな自分たちの一族全ての期待を背負って来ているのであらゆる手を使って后になろうとします。
始めは東家当主の娘、あせび目線で物語が始まります。あせびは二の姫のため本当は后候補としては選ばれない人です。今までほとんど外に出たことはなく、まさに箱入り娘として育てられてきます。そんなあせびにやってきた后候補の話。争うにはあまりにも世間を知らず、常識を知らないために人々に侮蔑されます。
序章で書かれた誰かの幼少期の話から、きっとあせびが嫁になるんだろうなと思っていました。でも、その予想は覆されました。本当に、そんな簡単な問題ではなかったんです。
説明したいですけど上手く説明できないですし、ネタバレになってしまうので言いませんがいくつも折り重なるどんでん返しと各家で考えられていた思惑にもまた驚愕です。
若宮は本当にずっと登場せず終盤に出てきました。そして出てきたと思えば憎らしいことを口にし、ずっと待っていた后たちをバッサリと切り捨てます。なんだよ、顔は良いけど性格の悪い王子パターンか?と思っていたらすべては思惑通りだったんですね。若宮は本当に聡明で、継承にふさわしい人だと思いました。
そして若宮が最後に選んだ人。そう来るかと思いました。でも、それでいいのだと思います。続けてしまうとずっと同じ歴史を繰り返してしまうと思うので。
若宮はきっと、彼女と彼女の女房とで素敵な未来を築いていけるに違いありません。
そして終章。序章はこうやってつながっていたのか!とびっくり。くぅ〜!最後の最後までやられました。

〈文藝春秋 2012.6〉H24.8.30読了