氷平線 (文春文庫)氷平線 (文春文庫)
著者:桜木 紫乃
文藝春秋(2012-04-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

真っ白に海が凍るオホーツク沿岸の町で、静かに再会した男と女の凄烈な愛を描いた表題作、酪農の地を継ぐ者たちの悲しみと希望を牧草匂う交歓の裏に映し出した、オール讀物新人賞受賞作「雪虫」ほか、珠玉の全六編を収録。北の大地に生きる人々の哀歓を圧倒的な迫力で描き出した、著者渾身のデビュー作品集。
「雪虫」札幌で事業に失敗し、自己破産して実家の農家を手伝っている達郎はすでに結婚している四季子との関係を終えられずにいた。あるとき、親が女性を買い、フィリピンから嫁を迎えることになる。
「霧繭」和裁師として独立したばかりの真紀は、得意先の呉服問屋の顧客課長と付き合ったことがあり、男は問屋のおかみとも関係を持っていた。2人でいるときは気まずい。
「夏の稜線」京子は東京から北海道の僻地へ嫁いできた。農業を営んでおり姑は男が生まれるのを待っている。近所でもよそ者扱いされ、今日子は居場所がなかった。
「海に帰る」昭和49年。25歳で独立し理髪店主の圭介は偶然店を訪れたキャバレー勤めの女性と関係を持つ。
「水の棺」歯科医師の良子は勤める歯医者の院長との関係を断ち切るためにオホーツクの僻地にある歯科へ行くことを決意する。
「氷平線」誠一郎はこの僻地と両親から逃れるために東大へ合格し10年後、税務署長として北海道へ戻ってきた。その時にかつて肌を合わせた女性と再会する。

予想はしていましたけど、暗くて切なかったです。
北海道に住む人々がその場所で生きていく姿。それは何だか諦めもあるような感じで。
最後は前向きになれるのかと思ったら、そういう作品もあるけど悲しい結末だったり…本当に読んでいてやりきれなかったです。
それでも読む手が止まらない。桜木さんの作品は何だかとても引き込まれます。
桜木さんは見たことのある場所じゃなければ書けないと言われたそうです。だから北海道の特に釧路を舞台にすることが多く、また経験のある美容師という仕事を書かれることが多いんですね。そして情景が目に浮かぶようです。何だか、寒さが伝わってきます。
どの作品もどこか危なげで心配な終わり方ばかりだったのだけど、頑張ってきた彼、彼女たちだから、幸せになってほしいと思って本を閉じました。

〈文藝春秋 2007.11
        2012.4〉H24.8.29読了