東京ネバーランド東京ネバーランド
著者:吉川 トリコ
実業之日本社(2012-07-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

波多野一人、通称ヒトリ。ふしぎな男。どうしようもなく恋しい男。五人の女性たちが出会ったひとときの夢物語。
「デリバリーサンタクロース」東大に合格した。フジロックのルーキー・ア・ゴー・ゴーで歌っていた。NYで個展を開いた。バンコクでトゥクトゥクの運転手をしていた。女をたぶらかして風俗に売り飛ばす、たちの悪い女衒をやっている――
そんな眉唾のような噂を中学生の時から纏っていたヒトリ。長いあいだ忘れられずにいた彼が、二十年近くのときを経て再び目の前に現れた。サンタクロースの姿をして……
「漂白シャネル」学生時代ずっと一緒にいて結婚すると思っていた本木と別れて以来買い物症候群に陥ってしまった奈緒。質屋にブランド物を売り食べ物にありつこうと思ったところに靴を見つけキャッシングしてしまった。また自己嫌悪に陥り帰宅するところで男性を拾った。ヒトリはいつのまにか居候するようになった。
「東京タイガーリリー」ナミは友人理亜無から何でも屋の存在を聞かされる。ナミはその何でも屋、ヒトリに誘拐してと頼む。占い師として有名になり娘そっちのけで働く母親に脅迫状を送るよう頼む。
「ウェンディ、ウエンズデイ」真知子は夫と2人の息子と暮らしている。夫を丸め込んで週に1度、脚本のカルチャーセンターに行くことにした。その時であったのがヒトリ。それ以来週に1度、真知子はヒトリと会うようになる。
「ティンカーベルは100万回死ぬ」母親が再婚した相手に連れ子としてやってきたヒトリ。タカコはヒトリと共に「ネバーランド」で働いている。ヒトリとかつてバンドをしていた今井が店にやってきて現実を突きつけられると、タカコは動揺してしまう。
「屋根裏のピーターパン」部屋の外に置かれていたものに、ヒトリは驚愕する。それを見てヒトリは途方に暮れた。でもヒトリはずっと途方に暮れていた。

以前「少女病」という本を読んでから気になっている作家さんです。
帯に女性書店員さんが読めばヒトリに惚れると書いていたけど、私はきっとこういう人は好きにはならないなぁなんて、元も子もないことを思ってしまった。
でも、どの女性にも言えることだけど、自分のこころの中に隙間があったら、そこに付け込んでスルリと入ってきたりするのかなぁなんて、ちょっと怖いことを思った。
10代にも30代にも見えるヒトリ。端正な顔立ちで歩いてるだけで周りの女性が見るんでしょうね〜。
好きだったのは最初の「デリバリーサンタクロース」かな。かつての中学生の同級生だったヒトリと鏡子。ヒトリがいた期間はとても短かったからきっと覚えていないんだろうなと思いつつ過ごす2人のクリスマス。何だか可愛かった。男性をデリバリーっていうのがなんですけど。
最後のヒトリの言葉にやられた。あれは確信犯ですよね。ずるいったら。
5人の女性たちがヒトリの事を物凄くよく言っていたけど、確かに傷を埋めてくれたのかもしれないけど、最後の「屋根裏のピーターパン」を読んでいたら何だかフツーの男の子だなと思いました。
ヒトリの役、あの人にやってほしいなぁっていうのがあるのだけど、批判があったら困るからやめておこう。映像化嫌いだって豪語してるし。でもまずふわっとした髪型にしないとね。

〈実業之日本社 2012.7〉H24.8.19読了