ご近所美術館 (創元クライム・クラブ)ご近所美術館 (創元クライム・クラブ)
著者:森福 都
東京創元社(2012-07-27)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
平凡なサラリーマンの「ぼく」こと海老野が勤める会社の近所に、突如できた小さな美術館。居心地のよさと旨いコーヒー目当てに常連となった海老野は、引退した館長に代わってやって来た川原姉妹の姉・董子に一目惚れする。来館者から持ち込まれる不可思議な謎を解いて董子を振り向かせようと、生意気でオタクなその妹・あかねの力を借りつつ奮闘を重ねるが……。恋する一青年が、美術館専属の探偵となって活躍するほんわかミステリ連作集。
「ペンシル」小さな美術館の常連となり館長の西園寺と仲良くなったのだが体調を崩して辞めることに。代わりに雇われたのが西園寺の親戚の若い姉妹。海老野は姉董子に一目ぼれする。董子は前の職場の男性と付き合っていたがアルバイトの女の子と彼が一晩を過ごしたことで心を病み退職し、引きこもった生活をしていた。久しぶりに出かけた董子は財布を落としてしまう。数日後財布を拾った男性が届けに来たのだが、海老野の恋敵になることは間違っていなかった。
「ホワイトボード」常連客の一人に池谷妙子という女性がおり、杏奈という子供もいる。もう一人の常連客今野と一緒にいるときに池谷は女性っぽさが出てくる。しかし今は杏奈が気がかりだ。杏奈は数か月前、ある殺人事件の目撃者となっていた。
「ペイパー」美術館の向かいに建つカフェのギャルソン、伊福部が美術館にやってきた。いつも見かけていた老人を見なくなったため病気にでもなったのではないかと心配しているという。その老人に助けられたことのある伊福部はお礼を言いたいと思っていた。海老野たちがチロリさんと呼んでいたその男性は数日前にお礼を言って以来来なくなっていた。
「マーカー」船瀬という常連客には楓子という娘がいた。娘はおとなしいいい子だがよく謎を船瀬に吹っかけてくるのだという。今回も謎の文字が。船瀬は美術館で事件を解決した探偵と噂されている海老野にこの問題を持ちかける。
「ブックエンド」海老野の大学時代の後輩である実穂に久しぶりに再会した。その際に双子の片割れがいることを知り、海老野が関わったことで片割れ、詩帆と出会うことが出来た。すると2人とも別々にだが頻繁に美術館に訪れるようになった。ある日、テレビで観覧車が止まったニュースが流れ、実穂が巻き込まれていたのを知る。ニュースは詩帆も一緒に見ていた。それをきっかけに2人はパタリと美術館に来なくなってしまった。
「パレット」美術館開館1周年記念パーティをすることになった。常連客で楽しんでいる所へ董子とあかねが昔住んでいたところの近所のおばさん、寺西がずかずかと上り込んできた。パーティが盛り上がってきたところで、一つゲームをすることになった。
「スケール」あかねに彼氏ができたらしい。その男性となぜか海老野と川原姉妹が食事をした帰り、美術館前で2人の男性が倒れているのが見つかる。一人はかつての董子の婚約者の尾形。もう一人はすでにこと切れていた。男性はピッキングをして室内に侵入しようとしていたらしい。

森福都さん、初読です。お名前は拝見していましたが読むのは初めてでした。森絵都さんと名前が似てるなぁと思って・・・っていう覚え方は失礼ですよね^^;
今回タイトルに惹かれて読んでみました。
いやー面白かった。好きです私!
内容は日常ミステリ…なんでしょうか。で、ラブコメっぽい恋愛要素もあります^^;
主人公の海老野が館長である董子に惚れたことで美術館にさらに通うようになり、事件に巻き込まれていきます。
それにしてもこの海老野は真面目で一生懸命なんだろうけど若さゆえか報われない^^;
最大のライバルである南田に負けじと奮闘するもいつも玉砕している可哀相な人です。
でも、ミステリの解決は見事。なるほどな〜と思うものばかりでした。
若干無理やりというか出来すぎ…と思う作品もありましたけど、それでも幸せな気持ちになれるなら良いかなという気もします。
また似ていない姉妹がそれぞれ個性的で良いんですよね。姉、董子はとても美人ですが前の職場の恋愛によりひきこもりになり、今もやや臆病。一方の妹あかねははっきり言って太っていて同人漫画家。それなりの接客は心得ているしっかり者。
海老のんとあかねぶーの言葉の掛け合いがとても面白くてほほえましいです。
結末が何となく予想がついたけど、それでも何だか心がほっこりとして温かい気持ちで本を読み終えることが出来ました。
やっぱり東京創元社の本は面白いです。

〈東京創元社 2012.7〉H24.8.17読了