クローバー・レインクローバー・レイン (一般書)
著者:大崎梢
ポプラ社(2012-06-07)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
作家=小説を書く人。
文芸編集者=小説のためになんでもする人。
老舗の大手出版社に勤める彰彦は、過去の人と目されていた作家の素晴らしい原稿を偶然手にして、どうしても本にしたいと願う。
けれど会社では企画にGOサインが出なくて――。
いくつものハードルを越え、本を届けるために、奔走する彰彦。
その思いは、出版社内の人々に加えて、作家やその娘をも巻き込んでいく。
本に携わる人たちのまっすぐな思いに胸が熱くなる一作。

良かったです。とても良かった。そして、本を読むことが好きでよかったと思いました。
主人公の彰彦は29歳で編集者になって3年。作家や本屋、他の出版社の社員とのかかわり方などが徐々に分かって来た頃、家永という小説家の未発表の小説を見て本にしたいと持ちかけます。
とてもいい作品だから、編集長も認めてくれてきっと本にしてくれる。そんな思いは簡単に打ち砕かれます。
老舗の大手出版社という安定した名前も、長所であり短所でもあるんですね。良い作品だから本にするという簡単な事ではやはりやっていけないんですね。今回も編集という仕事に関して細かく丁寧に書かれていて面白く読みました。
ここまで情熱をもって仕事ができるって素敵なことだと思います。たくさんの人に反対されても良いものは良い。そのために動いて結果を出して。結果を出してもそれから売り上げが伴わないと意味がないからそれからも動いて。本当に好きなものではないとそこまでできないですよ。
彰彦は今まで試験というものに落ちたことがなくていわばお坊ちゃんみたいな印象が最初はありました。それなのに恋愛に関しては結構純情な感じだし、偉ぶった部分もないから出来過ぎだ!なんて思っていたのですが。それには理由があったんですね。
子ども時代、辛かったと思います。そして同じではないけれど似たような境遇を持った家永の娘、冬実と出会い、徐々に惹かれていきます。
恋愛感情を持っちゃいましたけど、それでも家永や冬実に対する真摯な対応は素晴らしかったと思います。小説を好きだからこそそういう対応ができるんですよね。冬実と話す小説の話が楽しかったです。読んだことのある作品がたくさん出てきたので私も混ざって話をしてみたくなりました^^
そしてその今の彰彦を作り上げたのが「なおちゃん」の存在。
なおちゃんは本当に、よく間違った方向へ行かなかったなと思います。強い人です。
彰彦の会いたいけど会えない気持ちも伝わってきました。
だからこそ、最後の言葉にとても感動しました。涙が出てきそうでした。
素敵な作品を読めました。本が大好きな人に読んでほしいなと思います。

〈ポプラ社 2012.6〉H24.7.9読了