三匹のおっさん ふたたび三匹のおっさん ふたたび
著者:有川 浩
文藝春秋(2012-03-28)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械をいじらせたら右に出る者なしのノリ。「還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!」と、ご近所の悪を斬るあの三人が帰ってきた! 書店万引き、不法投棄、お祭りの資金繰りなど、日本中に転がっている、身近だからこそ厄介な問題に、今回も三匹が立ち上がります。ノリのお見合い話や、息子世代の活躍、キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗の初々しいラブ要素も見逃せません。漫画家・須藤真澄さんとの最強タッグももちろん健在。カバーからおまけカットまでお楽しみ満載の一冊です。
第一話
貴子が精肉店で働くようになって1か月がたった。大学を卒業してすぐに家庭に入ったため、働くのは初めてだった。そのため周りのテンポについて行けず、浮いていた。
第二話
重雄が行きつけの本屋で万引きが多発しているのだという。清一、則夫と共に監視を始める。
第三話
早苗は予備校に通ったにも拘らず成績が下降した。それには理由がある。祐希にも八つ当たりをする始末。原因は則夫の見合い話だった。
第四話
清一が嘱託として働く場所で不法投棄が行われていた。祐希をも巻き込み、犯人を暴く。
第五話
久しぶりにみどり商店街でお祭りがおこなわれることになった。しかし、神輿は修繕が必要で重雄の息子康生は資金繰りに奔走していた。
第六話
祐希は予備校からの帰り道、おっさん3人に絡まれる。放火犯と間違えて尋問してきたらしい。
「好きだよと言えずに初恋は、」
潤子は転勤族でしょっちゅう転校していた。ここには3年いて、長い方だ。転校するとクラスの同級生に伝えてから、彼と目が合うようになった。

三匹のおっさん待望の続編です!
このシリーズは好きなんですが、読むのがちょっと辛いときがあります。
今の世の乱れた部分がリアルに描かれているから。読んでて辛いんですよね…。
それでも三匹のおっさんは正義の味方!それに祐希も早苗もとってもいい子。いつものメンバーを見ているとちょっと癒されます。
第一話。
私もきっと始めの貴子のような人が近くで働いていたら、腹が立ってしょうがないと思うし、関わりたくないと思う。ちょうど今新卒の子が入ってきて、その子は今まで全く働いた事がないらしくて本当に貴子みたい。自分の事でいっぱいいっぱいだからか周りが見えていなくて、だから周りとテンポがあっていなくてそれで私がイラッとする^^;私は嫌われ者になることに決めたから社会人として人としておかしいと思ったらすかさず注意する。でも、そこからは彼女が変わらないと変わらないからね。怒られて、怒られた…って落ち込むんじゃなくて何で怒られたんだって考えられるようにならないと変わらないもんね。貴子は祐希にアドバイスはもらったけど、改善点を自分なりに考えて動いていましたよね。それが変わったなと思えました。前作でこの夫婦、大っ嫌いだったから^^;でも、私もこんな感じでほわんとして可愛らしい女性になるつもりだったんだけどなー。バイトも社会人になって最初の職場もムダに厳しかったからこんな厳しいお局様みたいな人になっちゃった。ちぇっ。← 過保護なお義父さんと息子が可愛かったです。
第二話。
読んでいて辛かったです。書店の現状は良くテレビで見ます。今回の犯人は学生だったけど、サラリーマンがガサガサと紙袋に入れて万引きしている監視カメラの映像を見たこともあります。悪いのは盗んだ人なのに、どうしてこんなに被害者側がビクビクして恐れなきゃいけないんだろう。本当に不条理で情けなくてしょうがないです。井脇さんが書店の利益について語っていた時、あまりにリアルな数字に切なくなりました。一生懸命働いている人を嘲笑うかのような万引き。本当に許せません。あの親が子供に仕向けるのなんてわけが分からない。腹ただしくて悲しい。
それでも中学生の最後の行動にほんの少しだけ笑顔になれました。
第三話。
祐希と早苗が可愛い・・・。喧嘩か?喧嘩するのか?と思いつつも爆発までいかないのが可愛い。八つ当たりなんてしちゃうけど、それは相手の事を思っているからこそなんですよね。いいないいな。羨ましい。祐希がとても男らしくてかっこよかったです。「高校生は子どもではないけど、大人でもない」という言葉が何だか凄くしっくりきました。それに、年齢関係なく親にとって子供はいつまでたっても子供。大人のエゴを子供に押し付けちゃいけませんよ。ああいう世話焼きの人ってどうして自分の考えていることが正しいって思って突き進んじゃうんだろう。不思議だ。
第四話。
これもなぁ…。読んでいて悲しかった。自分たちが悪いことをしているのに逆ギレしてその仕返しがあんなくだらないことか。あまりにも稚拙すぎる。警察とか内申とかそういうのでしか心が動かないなんて本当に悲しい世の中だ。清一が老け込んじゃうのも仕方がないよ。← でも、祐希の言うとおり、「近頃の若者は」と同様に「近頃の年よりは」と思うことは私も思う。優先席に老人が座ってて、携帯電話で普通にしゃべってたりするしね。もうよく分からない。席を譲ろうとして断られたことも何度かある。ホント、気まずいんですよね。譲ろうとして席を立ったのにまた座らなきゃいけないあの悲しさ。分かってほしいなぁ…。だから寝たふりとかしたくなっちゃうんだよ。←
第五話。
近所づきあいって希薄になってきましたよね。町内会のイベントとかも。私が小学生の時は町内会でやってるゴミ拾いとか参加したけど、今は全然だし、周りに誰が住んでるとか知らない人も多い。それって結構怖い事だと思う。だから、この資金繰りとか本当に大変だと思います。自分には関係ないって突っぱねることが出来るから。そうじゃだめだっていう事は分かっているんだけど。
第六話。
あーめんどくせーっていうのが正直な感想^^;偽三匹は頭の中が小学生なんだもの。正義は勝ち負けじゃないっての。だから痛い目見るんだ。っていうか痛い目見ろ!何様だっ。以上。

「好きだよと言えずに初恋は、」これはもうタイトルが良い。それに尽きる。←
私この歌大好きなんです。あの切ない歌詞、あの歌声。有川さんどうしてこの歌詞を選んだんだ!と詰め寄りたくなります。雑誌か何かに掲載されていたんですよね?だからずっと読みたいと思っていたのですが読めていませんでした。まさかここに入っているとは。嬉しかったです^^
お話は切ないですね。小学校という隔離された空間でちょっと目立っちゃうとなぜか標的にされるんですよね。もどかしくて切なかったです。普通に2人で会っておしゃべりできれば良かったのに。結局お別れしちゃうことに変わりはなかったのかもしれないけど、それでも何かが変わったかもしれない。そう思うと本当に切ないです。
有川さんの作品はベタ甘なはずなのに!切ないじゃないか!←

追記。最後の短編はお友達ブログ様の記事を拝見して潤子は早苗の友達で彼はイツキとさやかの子どもだという事を知りました。うーおー!そうなんだ凄い!リンクしていたんですね。
あまりにも切ない別れだったけど、そういうつながりがあるのなら、またいつかどこかで2人は逢える気がする。そう考えるだけで少しハッピーエンドに思えます。

〈文芸春秋 2012.3〉H24.5.6読了