
著者:辻村 深月
光文社(2012-03-17)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
「約束の場所、約束の時間」
武宮朋彦は陸上部に所属しているが、協調性がなく速ければいいと思っていた。ある日、菊池悠が転校生としてやってくる。彼は現在発売されているはずのないゲームの本を手にしていた。
「サクラ咲く」
若美谷中学1年5組の塚原マチは、自分の意見を主張できない、頼み事を断れない、そんな性格を直したいと思っている。ある日、図書室で本をめくっていると、一枚の紙が滑り落ちた。そこには、丁寧な文字で『サクラチル』と書かれていた。貸出票には1年5組と書いて、消された跡がある。書いたのは、クラスメイト?その後も何度か同じようなメッセージを見つけたマチは、勇気を振り絞って、返事を書いた。困っているはずの誰かのために。
「世界で一番美しい宝石」
一平と拓史、リュウは映画同好会を作り、正式な部にするためにコンクールに出品する作品を制作しようとしていた。ヒロイン役を探していたのだが、一平は「図書室の君」と呼ばれている立花先輩を見つける。しかし先輩は演劇部に所属していたが最近辞めたのだという。
類稀なる辻村さんのライトな作品^^;って言ったら失礼でしょうか。
中高生向けの作品だからというのもありますが、いつもの心を抉られるような痛い感じはありません。
私は読んでいてつらい気持ちになりたくないので^^;幸せな気持ちになりたいので是非とも辻村さんにはこういう作風のものもどんどん書いていただきたいなと思いました。
「約束の場所、約束の時間」皆さんが手を付けまくったタイムスリップもの。真新しい感じはないけど、タイムスリップの部分というよりは友情の部分が重要ですね。何となくだらっと生きていた朋彦だけど、悠と出会った事で人への思いやりを知ることが出来て良かったです。きっと朋彦はどういう形であれ未来を変えることが出来ると思います。
「サクラ咲く」表題作ですね。これが大人向けのだとドロドロしたものが渦巻くんだけど^^;そういう事はなく、爽やかでしたね。マチが人の言う事を聞いてしまうっていうのは学生時代の私だったら分かる。これで断ったら嫌われるんじゃないか、いじめられるんじゃないか。そう思ってしまってつい引き受けてしまうんだよね。おかしいなと思いつつも。だから変われたマチは強いと思う。手紙をやり取りする相手に関しては最初の段階で読めてしまったのだけど、中学生の頃の一生懸命なところがたくさん見えてキラキラしてるなと思いました。
「世界で一番美しい宝石」この作品も良かった。映画同好会の一平と拓史が「桐島、部活辞めるってよ」に出てくる映画部の2人に似てるなーなんて思いながら読みました。地味でクラスの人気者になるのとは違うけど、それでも夢中になれるものがあって、一生懸命な2人。とても輝いて見えました。先輩が演劇部を辞めた理由はきっと深いものだとは思いましたけど、酷いものですね。ああいうのを目指している人たちは、人の気持ちなんて考えないんでしょうね。私も思った。キモイって。最後が何だかすがすがしくて良かったなぁ。素敵でした。
〈光文社 2012.3〉H24.4.26読了
3作目が1作目、2作目と登場人物がちょっとだけリンクしていて、それも嬉しかったです。