峠うどん物語(上)峠うどん物語(上)
著者:重松 清
講談社(2011-08-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

峠うどん物語(下)峠うどん物語(下)
著者:重松 清
講談社(2011-08-31)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

オススメ!
市営斎場の前に建つ、一軒のうどん屋、『峠うどん』。
暖簾をくぐるのは、命の旅立ちを見届けたひとたち――。
第一章「かけ、のち月見」
野島淑子は両親が小学校の先生で祖父母はうどん屋を経営している。中学生になってもたまにうどん屋を手伝っている。しかし、両親、特に父はそれにいい顔をしない。自分と同じように教師になってほしいと思っているからだった。
クラスメートの大島のハトコが死んでしまったらしい。不良であまり顔も合わせていないため葬式に行くのが面倒くさいとぼやいていた。また、父はかつての同級生が急死し、通夜に行くことになっていた。
第二章「二丁目時代」
毎年勤労感謝の日、母は毎年かつて住んでいた地域の人たちと同窓会をしている。いつも陽気に帰ってくるのだが今回は違った。その場所に住んでいた、小さかった母をいつも可愛がってくれた岸本という男性が危篤の状態だという。
第三章「おくる言葉」
全くといっていいほど関わったことのない友島先生へ言葉を送る代表となってしまった淑子。またかつての問題児だったボーズは親の家業を継いだのだが、恩師が亡くなり、引導を渡すことになった。その大役にどうしていいか分からず、淑子の父に泣きついてくる。
第四章「トクさんの花道」
向かいの斎場で霊柩車を運転するトクさんはテレビに出演した。それがきっかけで30年以上も前に分かれた妻の今の家族から妻にあってほしいといわれる。認知症が進み、トクさんの名前をしきりに言っているのだという。
第五章「メメモン」
淑子の父のクラスのグループ学習でお葬式を学びたいというグループがあるという。その中の女の子、ミヤちゃんという子がやたらと勉強したいといっているのだという。
第六章「柿八年」
新聞の投稿で、水災害時に出してくれた柿の葉うどんの味が忘れられないという女性のものがあった。場所や時期的にもしかしたら自分の祖父ではないかと淑子は期待する。祖母に聞いてみても笑われ、的外れだったかと思ったとき、祖父とかつて同じ店で修行をしていた源さんから連絡が入る。
第七章「本年も又、喪中につき」
「峠うどん」へ向かう時、淑子は榎本先生に会った。榎本先生は町医者で、小さい頃からお世話になっている。自分が看た患者さんが亡くなったため、通夜へ行くのだ。最近良くない噂を聞いた。榎本先生の奥さんの体調が思わしくないのだという。
第八章「わびすけ」
「峠うどん」で予約席という木札を見つける。それは祖父の親友「わびすけ」が作ってくれたものだという。彼は今ヤクザになっているのだ。年末に祖父母とも風邪に倒れ、父と大掃除をしている時、黒塗りの車がやってきた。
第九章「立春大吉」
かつて祖父のうどんを食べた淑子の同級生の大島がうどん職人になると言い出した。受験が近づいている時だというのに。最近の模試の結果が良くなかったらしい。しばらく「峠うどん」で働かせてみることにした。そんな折、「みやま亭」で祖父が作ったはずの柿の葉うどんが売られていることを知り、2人は偵察に出かけることにする。
第十章「アメイジング・グレイス」
受験の前日の夜、祖母から電話があった。祖父がアメイジング・グレイスを聞きたいから、その曲が入ったCDを買ってきてほしいという。祖父がそんなことを言うのは珍しく、どうしてなのか淑子は気になった。
受験当日。淑子が試験に挑んでいる中、一人の尊い命が失われた。

重松さんの新刊です。物凄くインパクトのあるタイトルなので気になりました。
しかも上巻の表紙はどんと「峠」下巻の表紙は「うどん」と大きく書かれているんです。シンプルで良いです^^
お話は心温まる素敵なお話でした。
「峠うどん」にまつわる様々な話。それはほとんど「死」が絡んでいるのだけど、暗くなくてどこか温かく、前向きにさせてくれるようなお話でした。
私は身内のお葬式は3度出たことがありますが、全て20年以上前なのであまり記憶がありません。曾祖母と祖父2人。祖父2人は同じ年の8月と9月に亡くなりました。割と関わっていたはずなのですが、物心ついたときから2人とも病気がちで遊んだという記憶はないですね。何故か怒られた記憶は薄ぼんやりとありますが。
身内で、両親は泣いているんですけど私は泣かなかったですね。小さくてまだ良くわかっていなかったのかも。
身内だけど、死んでしまった時に泣けるか不安だったミヤちゃん。私は思い出はあまりなかったけど、ミヤちゃんは一緒に過ごした時間があるのだから、大丈夫だって思っていました。大丈夫って言う言い方もおかしいかな。
ボーズさんは生意気だったけど恩師のことは大切に想っていた事が伝わりましたし、おじいちゃんとおばあちゃんが今まで出会った人たちとの思い出が本当に素敵で、涙が出そうでした。千恵さんへ渡した柿の葉うどんも、わびすけさんとのかかわりも。おじいちゃんは語らないけど、その分発言する言葉の重みが深い。昔かたぎといえばそれまでだけど、それは大事なことだと思う。おじいちゃんとおばあちゃんの阿吽の呼吸も素敵でした。
淑子も、始めは子どもっぽさも感じましたけど、どんどん大人になって行くのが分かりました。岸本さんが亡くなりそうだということを知ったとき「しょうがない」といったのは本当にいけないことで、人はいつか死ぬというのは分かりきっているのだけど、しょうがないと割り切ることは、年が何歳だろうといってはいけないと思う。若い子ならなおさら。命は重たいんだから。
最後に淑子の同級生の死が出てきました。淑子が泣けるか分からないといっていたけど、最後の涙に私も目がうるっとしました。
2人の身体が心配だけど、「峠うどん」はずっと続けていってほしいな。
心にポッカリと穴が空いてしまった人のために、あったかなうどんをこれからも出し続けていってほしいと思いました。

〈講談社 2011.8 2011.9〉H23.9.15読了