大正二十九年の乙女たち (メディアワークス文庫)大正二十九年の乙女たち (メディアワークス文庫)
著者:牧野 修
アスキーメディアワークス(2011-04-23)
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オススメ!
日本が戦乱に巻き込まれつつある、大正二十九年。逢坂女子美術専門学校に、四人の個性的な女学生が通っていた。画家としての才能あふれる池田千種。武道に没頭する男勝りな星野逸子。身体は不自由ながら想像力豊かな犬飼華羊。素直で女性らしい優しさに満ちた緒方陽子。戦争の足音が近づく不自由な時代にありながら、短い青春を精一杯謳歌する彼女たち。しかし、その明るい日々に、不穏な影が忍び寄り…。奇才・牧野修、渾身の青春時代小説が登場。

この作家さんを読むのは初めてでした。
大正二十九年ということは架空の時代ということなのでしょうか。それでも出てくる名前は現代史にも名を連ねている人たちばかりなので、史実に基づいた物語なんでしょうね。
この物語は4人の乙女が主人公です。千種、逸子、華羊、陽子。それぞれ性格はバラバラだけど親友で固い絆で結ばれています。
4つの章に分かれていてそれぞれの視点で描かれています。でも、それと同時に同時進行で物語も進んでいて、この物語でずっとまとわりついてくる毛だらけの男が女性をさらうという事件も進み、4人は巻き込まれていきます。
その事件も気になるところですが根底のテーマは女性の成長や自立が描かれているんだと思います。
4人ともそれぞれ信念を貫いていてカッコイイです。陽子だけ割りと一般家庭に育った女性ですがそれでも心に秘めているものは熱い。3人が陽子を羨ましがっている理由も分かります。
千種なんて凄く家がお金持ちだけど、そのせいで自分の人生も縛られるなんて、辛いですよね。そして逸子。逸子は強い人だと思います。腕力も勿論ですが心も。男尊女卑もいいところなこの時代に、女だからといわれないためにひたすら勝ち続ける女性。芯が強くなければ乗り越えられないと思います。読んでて尊敬しちゃいました。
4人は芸術学校に通っているのだけどそこに登場する絵たちが凄く細かく描写されてて名前の挙がっている芸術家たちについても気になるところです。
物語も良かった。最後は切ないラストでしたけど4人が前を向いて生きている姿を読んで、自分も頑張んなきゃって思えました。

<アスキーメディアワークス 2011.4>H23.8.30読了