チーム (実業之日本社文庫)チーム (実業之日本社文庫)
著者:堂場 瞬一
実業之日本社(2010-12-04)
販売元:Amazon.co.jp
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誰のために、何を背負って、俺たちは襷をつなぐのか――。
母校代表としての箱根駅伝出場を逃した「敗れた強者」たちで構成される、<学連選抜>チームが挑む二日間、東京~箱根間往復217.9kmの苦闘と激走を描く! 俊英が迫真の筆致で書き下ろした、入魂の長編駅伝小説!

ネタバレあります

ずっと読みたいと思っていて、いつものように積読本が多くて一体いつ読めるんだろうと思っていたのですが^^;ようやく読めました。
堂場さんの作品を読むのは初めてです。
箱根がテーマでしかも、学連選抜に焦点を当てる小説なんてこれから出てこないんじゃないか!マニアックすぎて!^^;と思いずっと気になってました。
あまり語ると止まらなくなりそうなので、程々で止めるように努力しますが(できるのか?)、箱根駅伝だけではなく、学連選抜についてを書いていただいたのは、全然関係ない私ですが、凄く嬉しかったです。
学連選抜は予選会で本戦に挑めなかった大学の学生の中でタイムの早い学生が集まって、本戦を走るチーム。そのチームが出来てわずか2ヶ月くらいで本戦になります。
私も実際箱根駅伝を小さな時から見ていて、学連選抜は寄せ集めで、やはりずっと続いている伝統校や大学のチームには勝てないだろうと思っていました。
でも、学連選抜出場には大きな意味があります。シード圏内の10位以内に入ると、次の年の予選会から這い上がる大学が1チーム増えることになるからです。
シード権を取れなかった大学、また予選会をほんの少しの差で突破できなかった大学にとって大きな意味があります。
それに、文庫の対談にも書かれていましたが、数年前に学連選抜が大活躍した年があったんです。2008年、学連選抜は総合4位でフィニッシュという快挙を成し遂げたんです!次の年も9位に入っていますしね!この頃ずっと拓殖大学が数秒の差で予選会突破できなくて応援していたのですが、11位の大学の監督が学連選抜の監督になるとこの作品を読んで知り、拓大の監督だったんだなぁとちょっと今更しみじみしました。
チームはチームだけど、伝統があるわけではないからそのプレッシャーはないとかかれている部分を読んで、それもなるほどと思いました。
大学として箱根駅伝に出場したことがない選手が大学の名前と自分の名前を知らしめるためのチャンスでもあるんですよね。その学連選抜が4位と言う快挙を成し遂げた時、5区を走っていたのは上武大学の福山選手でした。上武大学が箱根駅伝を走るのは初。それに、福山選手は区間3位って言うすばらしい記録を打ち出したんです。その次の年から、学連選抜ではなく上武大学の選手として出場されました。上武大学はまだシード権は獲得したことがありませんが、予選会では常に上位で3年連続出場してるんですよ。
山の神と言われた今井選手が5区を初めて走った前の年、5区でごぼう抜きをした学連選抜の選手もいました。筑波大学の鐘ヶ江選手です。5人抜きをしたんですよ。次の年にタイムも人数も今井選手にぬかされちゃいましたけど、それでもあの走りを私は覚えています。
学連選抜はただの寄せ集めではないんですよね。同じ悔しい思いを持っていて、2ヶ月だけどチームを作って、監督もいて主将もいる。テレビで学連選抜の合宿風景が出たことがないと思うのでどういう雰囲気なのか分からないのですが、それでも私はテレビを見ているだけでも絆を感じたこともありました。
その想いや感情をこの作品が思い出させてくれた気がします。
浦選手はいい選手ですね。選手でも活躍しそうだけど、コーチとか監督としても活躍できる選手な気がします。誰もが手におえないとさじを投げた山城選手に対しても最後まで諦めなかった。大学進学から走ることの情熱を失いかけていたかつてのチームメイトだった門脇の情熱も取り戻させた。
本戦もドキドキしながら読みました。もうどこでどうなるんだろうと心配で心配で・・・。5区を門脇が走っている時に、私も門脇の大学の陸上部の人たちのように涙が出そうになりました。
1番うるっと来たのは、山城が浦に襷リレーをしたときに、背中を叩いたこと。山城がアクシデントを起こしたことで、怖いもの知らずだった山城が初めて恐怖を感じ、浦の強さを知ったことがもう何だか凄く感動してしまって。もうだめでした〜・・・。
それ以降の山城は人が変わったようでしたね。やっぱり何か挫折を味合わないとああいう選手はきっと分からない^m^ずっと腹が立った選手でしたけど、彼がキーマンとなっていて面白かったです。
最後もよかったなぁ・・・。今更だけど読んでよかったと思いました。
ただ気になったのはみんなの喋り方。仕方ないのかもしれないけど、みんな大学生とは思えない口調で、ものすっごく大人に感じた。でもまあ、箱根を走る選手っていまだに年上に見えるからいいのかな^^;
・・・あ〜あ。抑えたつもりだったけどやっぱり書いたら長くなっちゃったな^^;
箱根駅伝の話になるとエセフリークは話が止まりません。

〈実業之日本社 2008.10
         2010.12〉H23.8.16読了