山白朝子短篇集 死者のための音楽 (幽ブックス)山白朝子短篇集 死者のための音楽 (幽ブックス)
著者:山白 朝子
メディアファクトリー(2007-11-14)
販売元:Amazon.co.jp
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「長い旅のはじまり」川に溺れた娘を抱えた母親が和尚の元へ供養して欲しいとやってくる。和尚はここにかつて住み、川に溺れて死んだ親子の話を始める。旅をしていた父娘は盗賊に襲われ父は死に、娘は重症を負った。娘は自分の名前を思い出すことが出来なかったが、父の名前、そして自分を襲った事件に関しては覚えているのだと言う。和尚はお宮と名づけ、寺に住まわせることにした。
「井戸を下りる」幸太郎の父は高利貸しを行っており、近所で逆らうものはいなかった。その父の元放蕩息子にそだった幸太郎は父が大事にしていた壺を売ってしまう。父に怯えた幸太郎は井戸に隠れる。井戸の中には色が白くて美しい雪と言う女性が住んでいた。
「黄金工場」僕の家の近所には千絵ねえちゃんが住んでいた。ねえちゃんは工場で働いており、休みの日になると化粧をしてバスに乗って都会へ行く。工場の裏で、僕は金色に光る虫を見つけた。しかし、それだけではなかった。その界隈に落ちている虫は全て黄金色に輝いていた。
「未完の像」ある日、仏師として弟子入りさせてくれと少女がやってきた。彼女は殺人を犯しており、人が探しているから時間がないのだと言う。師匠はその場におらず、私は追い返そうとした。しかし少女は師匠を待つ間にキレイな鳥を彫った。
「鬼物語」その地では桜が赤く咲く。そこに住む人々は戦で死んだ兵士たちの鎧刀を剥ぎ取りお金を作っていた。花見をしている時に鬼が現れ、人を簡単に殺していく。
「鳥とファフロッキーズ現象について」私は父と2人で暮らしている。ある日、1羽の鳥が怪我をしていた。2人は動物病院へ行き、手当てをしてもらうが、その鳥が何の鳥なのか分からない。2人は鳥の怪我が回復するまで飼う事にした。その時名前は付けなかった。分かれるときに辛いからだった。
「死者のための音楽」美佐の母親は小さな時から耳の聞こえが悪い。10歳の時に溺れかけ、生死をさまよっている時にとても心地よい音楽を聴く。その音楽の正体は何なのか、たくさんの音楽を聴いて探し続ける。

山白朝子の正体が乙一だということをブログのお友達様に教えていただき、また私が読んでいないけど山白朝子は乙一なんですよ〜とブログのお友達様にお伝えしたのにもかかわらず、私はしばらーくこの作品を読めずにいました。手元にはずっとあったんですけど^^;
関わった皆様ごめんなさい。ようやく読みました。
この本の帯、乙一さんが書いてたんですね^^;
「これは愛の短編集だ」って自分の作品に対して言っていました^m^自作自演なのか自画自賛なのか。でも、強烈な宣伝にはなりましたよね。きっと。
乙一さんらしいのからしくないのか、それは良く分からないですがどの作品も面白く読みました。
「幽」って言う雑誌は怪談専門誌のようですが、それほど怪談と言う気はしませんでした。ちょっとグロテスクなものもありはしましたが。
本当に、様々な愛がちりばめられた作品だったと思います。
私が特に好きだったのは「長い旅のはじまり」です。
始めに読んだから印象に残っているのかもしれません。娘とその息子の物語が切なかった。息子は生まれ変わりだったのでしょうか。
最後、ちょっと救いがあったのもよかったです。
「黄金工場」が1番グロテスクでしたね〜。いや〜気持ち悪かった。人間関係も。あのあとどうなるんだろう。あ〜怖い怖い。
あとは「鳥とファフロッキーズ現象について」も好きです。
愛情に人も鳥も関係ないのかな。鳥の愛情はちょっと強引さもあったけど、愛情ゆえの行動だったんですよね。そして鳥は真相を知っていた。それがなんだか哀しくて切なかったです。
やっぱりクオリティが高かったです。これは新人だと思ったら度肝を抜かれていたと思います。乙一さんだと分かると、やっぱりなと納得。面白かったです。

〈メディアファクトリー 2007.11〉H23.8.11読了