探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)
著者:山口 幸三郎
アスキーメディアワークス(2010-09-25)
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オススメ!
「椅子の声」橋田勉は息子夫婦に追い出されフリーマーケットで不用品を処分しようとしていた。むすっとした表情をしている橋田のところへ誰も客はやってこない。しかし、20歳くらいの若者が椅子がいいと褒めてくれ、買うという。しかしその椅子にはカラクリがあり、その中に古い手紙が仕込まれていた。いったい誰が誰に送ったのか。この椅子は橋田の祖母、文江の椅子だという。文江とその椅子と贈り主について、なぜか橋田とその青年、日暮旅人が調べることとなった。
「探し物はなんですか?」保育士の山川陽子はある日、保護者の迎えが遅い園児・百代灯衣を自宅まで送り届ける。灯衣の自宅は治安の悪い繁華街にあり、日暮旅人と名乗る灯衣の父親は探し物専門の奇妙な探偵事務所を営んでいた。
翌日、陽子は通勤途中に大事にしていたキーホルダーを落としてしまった。灯衣を送りにきた旅人は陽子の異変を感じ取る。
「景色の神秘」陽子は再び旅人の元を訪れていた。それは園長から頼まれたことを旅人に依頼するためだ。事務所へいくと、チンピラの風貌である雪路雅彦という人物がいた。彼は陽子を邪険に扱う。そこで、陽子は日暮旅人の能力について知ることになる。
「地中の詩」以前陽子が依頼していた仕事が園長からの依頼という事で、旅人は依頼を受けることにした。内容は10数年前に埋めたタイムカプセルを探して欲しいという依頼だった。埋めた場所には今マンションが建とうとしており急がなければならないのだが、どのあたりに埋めたのか分からなくなったという。

うわ〜この本好き!最近読み始めたメディアワークス文庫で出ている本はハズレがありません。今回の作品もとても好きでした。
視覚以外の感覚がない旅人。聴覚も味覚も嗅覚も触覚もない。全ては視覚によって視えるのだという。だからこそ他の感覚を補おうと視覚が物凄く発達し、探し物専門の探偵事務所を構えている。
とにかくこの旅人という人が本当にお人よし。
頼まれたことは断らずになんでもこなしてしまいます。
貧乏くじを引いてしまうこともしばしば。そしてお金を取らない場合もあり、商売は成り立ちません。
でも、その探し物の中にはそれぞれのドラマがあって素敵でした。
「椅子の声」の決して結ばれることが出来なかった2人の淡くて儚い恋心とか、「探し物はなんですか?」の陽子の小さな頃の大きな後悔とか「景色の神秘」でのドクターの恩師を何とか生きたいと前向きにさせてあげようと思い出の場所を探すところとか、「地中の詩」の陽子のピンチを旅人が助けるところとか。
何だかきゅんきゅんしちゃうんです。どの人の物語もとても素敵で、ほわんとあったかい気持ちになりました。
そして、ただあったかい話がつづくのではなく、伏線も張られているんですよね〜。
まさかの関係にびっくりしました。
えぇ!?まさかあの人とあの人につながりが!?みたいな^m^
それはとっても驚きで、そしてとってもニヤニヤしちゃう展開でした。
そしてさらに最後のどんでん返し。ああくるとは驚きでした。
旅人が探している物はいったい何なんだろう。
そして、おそらくだけど「他の感覚が眠ってしまっている」理由がなんなのでしょう。
そしてそして旅人と灯衣ちゃんは血がつながっていないのに親子として一緒に暮らしているのはどうしてなんでしょう。
そういうのはだんだん明らかになっていくんでしょうか。
今、第2弾を読んでいます。第3弾はつい最近出たらしいです。
また読むシリーズが増えました〜。1冊目から心を鷲掴みにされています^^

〈アスキーメディアワークス 2010.9〉H23.7.29読了