
著者:三上 延
アスキーメディアワークス(2011-03-25)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。
第一話 夏目漱石『漱石全集・新書版』
五浦大輔は祖母と母と3人で暮らしていた。一緒に暮らしていた祖母が亡くなり、部屋の整理をしていると、かつて祖母に触った事で怒鳴られた全集が置かれていた。大輔が幼い頃、入ってはいけない、触ってはいけないといわれていた祖母の部屋の本棚に置かれていた本を散乱させた事でかなりの剣幕で怒鳴られ叩かれた。それがきっかけなのか分からないが、大輔は本が読めない「体質」となっていた。その全集がどのくらいの値がするものなのか、大輔はかつての通学路だった場所にあったビブリオ古書堂に行って見る事に。そこにいたのは高校生くらいの女の子。店主は病院で入院しているのだと言う。病院へ行ってみると、そこには6年前に見た女性がいた。先代の店主が亡くなり、彼女が継いだのだという。名前は篠川栞子といった。彼女に夏目漱石の全集を見せると、第八巻 それからだけがほかと違うと言う。中を開けると、そこには「田中嘉雄様 夏目漱石」と書かれていた。
第二話 小山清「落穂拾ひ・聖アンデルセン」
ビブリア古書堂の常連でありせどり屋である志田はたくさんの本を持ってきた見返りとして一つ頼みごとがあると言う。志田がずっと大事にしていた本が女子高生に盗まれたと言う。その犯人を捕まえてほしいのだと言う。
第三話 ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」
坂口昌志という客がやってきた。彼は「論理学入門」という本の値をつけてほしいと言う。彼はピシッとしたスーツを着ており、髪型もきめている。しかし、サングラスだけが少し不恰好だった。その人が帰って数時間後、坂口の妻と言う女性から電話があり、その本は旦那がとても大事にしている本だから取り下げてほしいと言う内容だった。
第四話 太宰治「晩年」
店主の怪我にかかわる人物を探すため、ビブリア古書堂でも仕掛けを施すことにした。そこへかつて関わった女子高生や志田、坂口夫婦が店を訪れ話をしていたのだが、怪しい人を目撃したと言う。
・・・好きだ・・・。この作品、好きだ・・・。
っていうかもう舞台が古書店って言うところで萌えますよね^^本好きにはたまらない舞台です。古書店と言うと、まず思い浮かぶのは「月魚」なんですよねぇ。
せどり屋っていう言葉が出てきたときには迷わず瀬名垣を思い出してしまってニヤリとしてしまいましたよ。
章ごとに重要となる本はどれも読んだことがなかったのですが、どの本も興味をそそられました。それは、店主の栞子が本当に嬉しそうにその物語を嬉しそうに語るからかも。小説を読めない大輔と小説がないと生きていけない栞子。栞子が物語を語り、大輔が聞く。その関係性が始めからいいなと思っていました。
始めの大輔のお祖母さんの残した本の真実は驚きました。そうしたらすべてが頷ける。鳥肌が立ちました。
栞子さんの頭の切れ具合がハンパじゃありません。それは、今までずっと読み続けた本の知識からなるものなのでしょうか。
二話の真相も、三話の真相もぜんぜん気づきませんでした^^;
でも、読み終えたらなるほどと納得できるんです。その物語の解釈も栞子さんがしてくれます。
私は古書はよまないのだけど、この小説に出てきた作品は読んでみたいと思いました。この物語とどう結びついているのかも気になりますし。
この物語の世界にどっぷりと浸かり、幸せな気分で読書できたなーと思いました。
栞子と大輔の関係がどうなるのか気になりますし、栞子の物語の解説もまだまだ気になります。続編出してくれないかなぁ。
〈アスキーメディアワークス 2011.3〉H23.7.6読了