ばらばら死体の夜ばらばら死体の夜
著者:桜庭 一樹
集英社(2011-05-02)
販売元:Amazon.co.jp
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2009年、秋。翌年6月から施行の改正貸金業法がもたらすのは、借金からの救済か、破滅か―四十過ぎの翻訳家、吉野解は貧乏学生の頃に下宿していた神保町の古書店「泪亭」の二階で謎の美女、白井沙漠と出会う。裕福な家庭に育った妻とは正反対の魅力に強く惹かれ、粗末な部屋で何度も体を重ねる。しかし、沙漠が解に借金を申し込んだことから「悲劇」の幕があがる―。

ネタバレあります

タイトルからして絶対に報われないし、誰か死ぬし、救いようがない話だろうなと思いました。で、やっぱりそんな話でした。
まず沙漠という女性が好きになれませんでした。お金持ちの家系だったけど、両親が亡くなったことで消費者金融からお金を借り、美容整形を繰り返し、闇金に手を出し多額の借金を抱える。で、お金をもらえそうな人だったら誰とでも寝る。
両親が亡くなったことはいろんなことも重なっているから可哀相だと同情できるけど、それ以降のことは全く同情はできない。何だか誰か助けてくれるのを待っているようで、自分の力で動くことを諦めていると言うか。
吉野解の動向諸々もよく分からなかったなぁ。ちゃんとしている人なのかと思ったら突然「ママ」って言ったりとか、変な人とか気持ち悪い人としか思えなかった。何の問題を抱えているのかもよく分からなかったし。ただただ気持ち悪いだけだった。
どの章も救いようがなくて、ひたすら暗くなったり人の気持ちがぜんぜん分からないなぁと思っていたのだけど、佐藤さんが主役?の章の「Ted」だけは何だか好きだった。佐藤さんも罪を背負っていたけど、ちゃんと罪を償おうとしているのは伝わってきたし。悪い人ではないのだろうと思うし。何だか1番人間味を感じたんですよね。人とのかかわりとか、沙漠へのいたわりとか。
それ以外は何だか現実味を帯びている気がしなかったです。沙漠がお金がもらえるからとひょいひょい解についていったのとか、その後の解の行動とか。
でも、ちょっと前まで確かに消費者金融に踊らされている人がたくさんいましたよね。かわいい犬を使ったり、かわいらしいタレントを使ってみたり。こんなに気軽に借りられるんだ〜って思わせておいて、取立てが怖くて酷いって高齢者が借りて困ってるって言う投書か何かを読んだような。でも、どんなにかわいらしい犬とかタレントとかを使って入りやすくしていても、利息が25%って、1万借りたら12500円返さないといけないってことだよね・・・借りたことないからよくわかんないんだけど。
法が改正されてからそこまで多くCMも見なくなった気がします。
沙漠は自業自得だと思うけど、それでもやっぱり罪が公にされなかったのはちょっと納得できなかったかな。きっと行方をくらましていたのだから、犯人特定にはいたらないんじゃないかとは思ったのだけど。10年で30歳分くらい歳をとって老人のようになってしまってはいるけど、それだけで罪が償えるわけではないし・・・。やっぱりそこはちゃんとなっていてほしかったな。
ばらばら死体になったひとは意外でした。プロローグでしてやられましたね。
いろいろ書いているけど、引き込まれたし読んでいて面白かったと思います。
それでもやっぱり、何だかもやもやが残りました〜
そういえば美奈代の頭痛の原因ってなんだったんでしょう。ただ殴られて朦朧としていただけ?
白井沙漠の正体が分かったとき、何気なく読んでいたところにからくりが隠されていてそこは流石と思いました。

〈集英社 2011.5〉H23.6.27読了