金閣寺 (新潮文庫)金閣寺 (新潮文庫)
著者:三島 由紀夫
新潮社(2003-05)
販売元:Amazon.co.jp
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「国宝・金閣寺消失」この事件を題材として、その陰に秘められた若い学僧の悩み、幻想と心中に至る心中を書き表す。

舞台「金閣寺」を観に行くと決めてから読もうと思っていたのに、読み始めたのは観劇の3日前でした^^;読み終わるか心配でしたが無事読了。
以前「ネバーランド」を読んだ時に物語の中で登場した「仮面の告白」を読もうとしたのですが、数ページで挫折した経験がある三島由紀夫作品だったので、ちょっと心配でした。
それでも、今回は読んでいて面白かったです。内容的に面白いという表現はおかしいと思いましたけど、どんどん読み進んでいきました。
前回読もうとして挫折したのは高校1年生の時だったので^^;まあ、私がまだまだ子どもだったという事で・・・。
あとは「金閣寺の燃やし方」で実際の金閣寺焼失事件についてや三島由紀夫の「金閣寺」について読んでいたのも良かったのかもです。
溝口の境遇は良くはないけれど、悪くもないと思う。
吃音であるという事以外はとても健康体で悪いところもないのだから、もっと自信を持てばいいのにと、読んでいて思いました。
そしてとても純粋で素直なのだと思う。
鶴川は溝口にとっての光で、鶴川は自分の中の暗い部分に悩み葛藤し自殺を図ったということが溝口には信じられなくて混乱する。
人は誰しも表の部分と裏の部分があるのだということを分かっていれば、溝口もそこまで抱える事はなかったのに。
溝口は老師を自分の事を理解してくれないと軽蔑していたけど、第三者から見るととても寛大な優しい人なのだと思う。
溝口の父親との約束を守って溝口を修行僧として住まわせ、溝口が流産させたという女性へお金を渡し、その件について人に口止めした上で溝口を大学へも行かせた。
溝口が失踪して警察をつれて戻ってきても怒らず、柏木にした借金も肩代わりして。
溝口はきっと友人の形見だと思って大事にされていたのだと思うのだけど、それでも溝口が老師に求めていた愛情とはまた違うんだろうな・・・。
その2人の関係がもっと分かり合っていたら、また違ったのかも知れないな。
金閣寺の美に魅せられ、金閣寺に縛られて溝口の心が捉えられていく様が読んでいても深く伝わってきました。
読み終えた後に、何だかぐるぐるといろいろ考えてしまいました。

〈新潮社〉H23.2.3読了