
著者:辻村 深月
新潮社(2010-10)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
突然死したアイドルに。癌で逝った母に。喧嘩したまま亡くなった親友に。失踪した婚約者に。死者との再会を望むなんて、生者の傲慢かもしれない。間違いかもしれない。でも―喪ったものを取り戻し、生きるために会いにいく。―4つの再会が繋いだ、ある真実。新たな一歩を踏み出す連作長編小説。
「アイドルの心得」
平瀬愛美は死者と生者を引き合わせる、使者(ツナグ)の存在を知り、どうしても逢いたい人がいた。それは急死した水城サヲリ。地味で家族からも友達からも遠ざけられ、家と仕事場を往復するだけの日々。元気付けられたサヲリにどうしても逢いたかった。
「長男の心得」
畠田靖彦は長男のため工務店を引き継いだ。長男と言う事で厳しく育てられ、それは息子の太一にまで及んだ。しかし、太一は勉強もあまりできず、自分に似ず強気でもない。それを情けなく思っていた。靖彦は母親の三回忌の後、母に会うことを決意する。
「親友の心得」
嵐美砂は高校に入学して御園奈津と出会い、親友となった。強気できつめな性格の嵐は親友は出来ないだろうと思っていた。2人は演劇部に所属しており、主役の座を2人で争う事になる。関係がギクシャクし始めた時、嵐がした小さな出来事が、御園の悲劇へと繋がる。
「待ち人の心得」
土谷功一は7年前からずっと待っている人がいる。結婚を約束した日向キラリだった。偶然の出会いだったが、惹かれ、プロポーズをした。しかし、その後友人と旅行へ行くと言って出て行ったきり、連絡が取れなくなっていた。
「使者の心得」
渋谷歩美は両親を幼い頃に失い、叔父の家で育った。高校2年生になったとき、祖母から「私の後継者になってほしい」と告げられる。それは使者(ツナグ)という仕事で、死者と生者を引き合わせるという信じられない話だった。まずは見習いと言う事で、祖母の仕事を手伝う事になる。
辻村さんの新刊。前々から予約していたのですが「王様のブランチ」で特集されてから尚更読みたくてしょうがなかったんです。ようやく来ました。
私、ツナグという存在は天使みたいなものだと思っていたんです。伊坂幸太郎さんが書かれた「死神の精度」のように、姿は人間だけど中身は天使みたいな感じなのかなと思っていて。
でも、ツナグも依頼する人と変わらない人でした。それがまた感情が入って良いんですよね。
「アイドルの心得」私も愛美のような部分は持っているから気持ちは分かる。でも、ちょっと悲観的になりすぎかなとも思う。同期の女の子のように毎日遊び歩いてるから人生が良いってワケでもないしね~。自分が楽しいからみんなも楽しいはず。とか、あの人は私たちとは違って遊ばないから何を楽しんでいるのか分からない。なんて、自分目線でしか物事を考えられない人は大嫌いだ。サヲリと会ったことで、愛美は前向きになれたようでよかったです。もう自分を卑下するのはやめて欲しい。
「長男の心得」読んでいて腹が立ってしょうがなかった。ザ・昭和の男。ですね。いろいろ責任を抱えているのは分かるけど、だからといって自分の言う事は間違いないって思っている人は大嫌い。甥っ子や姪っ子のことも卑下するし、太一の事なんて勉強できないからダメみたいな風にしか感じていないし。気配りが出来ている事や空気を読んでいるところを、こういう空気読めない人はわかんないんだろうな~。
「親友の心得」う~ん・・・。読んでいて辛かったです。まず始めにこの章を読んで思ったのは、ツナグは人間だったのか!っていう事でした^^;始めに書いたように人間の姿をした別のものだと思っていたので。しかも御園が憧れていたアユミ君。人生は皮肉ですね。嵐の御園に会う理由からしてどうかと思った。そして会ったのなら正直になんで言わないんだと思った。性格かなぁ。最後の嵐の姿は辛かった。御園は全部分かっていたんだね。演技や勉強は嵐の方が上だったかもしれないけど、1枚上手だったのは御園だった。
「待ち人の心得」これは前の話とは別の意味で読んでいて辛かったです。2人は相思相愛だったのに。どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだろうって、読んでいて悲しかったです。でも、ちゃんと分かって良かったんだと思います。遺された人はずっとその想いを抱えていくには辛すぎますもんね。最後は前向きになれてよかったです。使者が感情を露わにしたのも、良かったんだと思いました。
「使者の心得」最後は使者の事だろうなと思っていました^^歩美はとってもいい子ですね。両親の不審な死を経験しつつもちゃんと地に足つけて生きてる。多分、叔父さん家族や大叔父やお婆ちゃんが素敵な人だったのでしょうね。最後にこのお話を読んで、この物語の少しのカラクリが解けました。愛美に会った時、大学ノートを持っていましたよね。何で大学ノート?と思っていたのですが、何と初回だったんですね。ノートから目をそらさずとか書いてあったのに、全然気づかなかった。嵐や御園のくだりも書かれていましたね。御園の気持ちに気付かないのは鈍いですよね~。切ない部分なのに可愛らしく感じたり。そして土谷を探しているときも、そういえばどうして赤い傘なんだろうって思っていたんでした。なのに、大して気に留めていないんですよね。愛美が最後に出て来てよかった。少しは幸せそうで安心しました。家族とは、多少歩み寄れたのかな。
最後の最後。歩美が「俺、いつか会うんだったらおばあちゃんがいいよ」と言った時は、私はおばあちゃんの立場じゃないのになきそうになりました^^;な、なんていい子なのっ!ツナグの役割は、歩美ならきっと立派に果たせるだろうなと思いました。
面白かった!素敵なお話でした。読み終えた後に、何だか心が温かくなりました。
〈新潮社 2010.10〉H23.1.20読了