あるキング
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弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた山田王求。
“王が求め、王に求められる”ようにと名づけられた一人の少年は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を背負い、野球選手になるべく育てられる。
期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常ともいえる情熱を彼にそそぐ。すべては「王」になるために--。

ネタバレあります

伊坂さんの作品、久しぶりです。
目次?を見て、最初の章を読んだ時点で、主人公の行く末が何となく予想がついてしまい、何だか最初から最後まで悲しい気持ちで読んでました・・・。
南雲慎平太監督が死んでしまったときから、もしくは、仙醍キングスの熱烈なファンの両親のもとに生まれたときから、王求の人生は決まってた。
王求は、こういう人生で少しでも幸せを感じる事が出来たのだろうか。
あんなに両親から野球については異常とまで言える愛情を受けて、野球しか与えられない人生。
王求の野球に対して害を及ぼすものは、どんな事でも排除する両親。
王求本人も、野球を始めた時から高校生までは学ぶものもあって得るものもあって刺激もあった毎日だったけど、ずっとなると思っていたプロ野球選手になってからは、本を読んでいても毎日がつまらなそうだなと思いました。
何だか気持ちが微妙に暗いときに読んで、ずどっとまたきました^^;
人生って…何だろうと暗く考えてしまいました。
すぐ考えるのは止めたけど。
東卿ジャイアンツの大塚選手は、監督である父がかつての名選手でプレッシャーを感じている事があったけど、大塚選手の方が、生きているっていう気がしました。
個人的に好きだったのは乃木君。
凄いとみんなが思っている人の知らないことを教えて優越感を覚えるとか、可愛らしいなと。
王求がやっていて自分も出来ると思って期待を裏切られ、自分を馬鹿にした先輩のポジションを奪おうと頑張っているのとか、人間らしくて好きでした。
津田さんの存在も救いだったかな。
両親も、こういう子供を育てる事が出来て、幸せだったんだろうか。
でも、王求は自分の末路も何もかも知っているような気がした。
それが尚更、切なかった。
伊坂さんらしいのか伊坂さんらしくないのか。
(読んだ事があるわけじゃないけど)昔の海外作品を読んでいるような感覚でした。
って、いろいろ書いてますが、結果的には結構面白く読めたんです。
そこは流石伊坂さんだなって思いました。

〈徳間書店 2009.8〉H22.1.14読了