ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)
ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)
すべての善人に読まれるべき、本の形をした怪物である――桜庭一樹
過去に一族のほぼ全員が毒殺されたブラックウッド家。幼いメリキャットと姉のコンスタンス、そして二人の伯父ジュリアンの三人だけが生き残った。十八歳になったメリキャットは、毒の影響で不自由な体となり、狂気に冒されつつあるジュリアン、毒殺魔と噂されるコンスタンスとともに、閉ざされた屋敷で静かな暮らしを営んでいた。
週二回、食料品を買いに村へゆくと、ブラックウッド家に敵意を抱く村人たちが彼女を待ち受けている。だが、メリキャットは強固な空想の中で生き、彼女なりに村人たちを軽蔑し、憎むことで己を守っていた。
空想に彩られた穏やかな日々を過ごす三人の元に、突然、今まで連絡の無かった従兄のチャールズが訪れる。世慣れた様子の彼に惹かれるコンスタンスと、忌み嫌い追い払おうとするメリキャット。だが、美しく病める箱庭世界は大きな変化を迎えようとしていた……。

皆様のブログを拝見し、何度かこの作品が取り上げられているのを見つけ、気になっていました。
図書館になかったため、読めないなぁと思っていたら、「書店はタイムマシーン-桜庭一樹読書日記」に登場し、桜庭さんが絶賛されていたため、文庫本を買ってしまいました。
その本を読んで、文庫本が出ていると知ったので。
ジャンルとしては、ホラーなんですよね。
キャーって思う怖さとは違って、心の中がすうっと冷えてしまうような、何だか物悲しい怖さを感じました。
ブラックウッド家はかつては資産家で、家族で幸せに暮らしていた。
でも、毒殺事件によって家族はコンスタンスとメリキャットと叔父のジュリアンだけとなってしまう。
それでも、街の人たちには不気味がられてからかわれても、この3人で生活は成り立っていて、幸せに暮らしていた。
はず・・・だったのに、従兄弟のチャールズによってその幸せな生活が崩れていく。
私は最初、チャールズが真実を知っていて、3人を光の指すほうへ導いてくれるのかと思っていたのだけど、全然違いましたね。
チャールズがやってきた後にまた大きな出来事があるのですが、そのときの街の人たちの3人に対する言葉が胸に突き刺さりました。
人は怖い。軽はずみな言動でも、言って良いことと悪いことがあります。
それを読んでいて強く感じたから、2人は2人っきりで生きていくのも、ありなのかなとも思ってしまいました。
コンスタンスとメリキャットにとっての幸せは、この屋敷で2人で暮らしていくことなんですよね。
とても怖かったし、それがいいことなのかは分からないけど、でも2人にとってそれが幸せならば、それもありなのかなとも思いました。
いやはや、凄い作品だったな。

〈創元推理文庫 2007.8〉H21.10.2読了