賢者の贈り物
賢者の贈り物
「金の携帯銀の携帯」私は携帯が壊れてしまったため、修理に出すことにした。その間に使う携帯をショップ店員から3つ渡された。電子マネーが5千円分入った携帯、5万円入った携帯、何も入っていない携帯。これは何を意味しているのだろうか。
「ガラスの靴」後輩の須藤が浮かない顔をしている。彼の部屋で同期会をしたのだが、朝起きたら、自分のサンダルがなくなっていて代わりに女物のサンダルが残されていたのだと言う。それが誰のだかわからないため、悩んでいた。
「最も大きな掌」ベンチャー企業の社外取締役の私は悩んでいた。社長が体調不良となり、社長職を退くこととなった。次の社長を3人の中から選ばなければならないのだが、それを自分に託されたのだ。
「可食性手紙」私の通う高校ではみんなテストにカンニングペーパーを持ってくる。私は先生に見つからないよう、オブラートに書くことにしている。今日は私の苦手な歴史のテスト。開始直後、オブラートが2枚あることに気づき、気になっている仲野君と目が合った。
「賢者の贈り物」私は悩んでいた。妻が、カメラのフィルムを大量にプレゼントとしてくれたのだ。ここ数年はデジカメしか使っておらず、フィルムを使うことはない。それを妻も勿論知っている。妻はなぜフィルムを送ったのだろうか。
「玉手箱」僕は祐一という少年に出会い、いじめから助けたらしい。祐一の母と知り合い、深い仲になった。祐一が林間学校に行っている間の3日間。2人でずっと一緒にいた。別れのとき、紙箱を渡される。これをあけると、もう二度と会えないと言うのだ。
「泡となって消える前に」行きつけのバーの雇われママである藤原に、僕は悩みを打ち明けた。実家から見合いの話が来ており、結婚を考えろと言う。しかし自分には付き合っている彼女がいる。だが、実は彼女のことをほとんどしらない。彼女が自分のことをほとんど話さないのだ。なぜ話してくれないのか、藤原と考える。
「経文を書く」元部下の磯風に相談された。後輩の西川がワインに懲り、給料では賄えないほど、入れ込んでいるのだ。破産する前に、何とかしたいという相談だった。
「最後のひと目盛」私は失恋をし、大学のサークルにも出ずひたすら食べていた。すっかり太ってしまった自分。42キロだった体重は58キロに。60キロになったら漫画を描くのを止めると決意していた。そんな時、飲み会に誘われる。そこには同じサークルの男の子がいた。
「木に登る」会社の人間が「テーシーがやばい」と言っていた。私はあせっていた。自分の買った株が暴落する可能性があったからだ。同期の村田も購入している。売却すべきだと伝えたいが村田は南米へ出張に行っている。

童話をテーマにした9つの物語です。
どの作品にも磯風さんという黒髪の美女が登場するのですが、同一人物・・・ではないよね。
作品によって性格も年代も違います。
共通しているのは黒髪の美女と言うことだけです。
すべての作品に登場させる意味ってなんだったんだろうなぁ。
全部が最後は一つの線に繋がるっていう意味でもなかったし。
一つ一つ、面白かったですけどね。
社員ないしは友人同士で謎を推理したりして。全然話が進まなくてイライラした作品もあるけど。
好きだったのは「泡となって消える前に」ですかね。まさかあのひとが!って、私は全然気づかなかったので。
「最後のひと目盛り」も学生の悩みだったり恋愛だったりが描かれていて好きです。
石持さん、うまいなぁと思います。

〈PHP研究所 2008.4〉H21.9.16読了