
なみだ研究所へようこそ!―サイコセラピスト探偵波田煌子 (祥伝社文庫)
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ネタバレ注意!
「アニマル色の涙」
大学教授の紹介で<なみだ研究所>で働く事になった新米臨床心理士の松本清は、最近眩暈に悩んでいる。それはセラピストの波田煌子のせいだった。貧相な知識に惚けた会話。なのに、患者の心の悩みをズバリと言い当て、その病を治してしまう。
高野健朗という患者はたくさんの動物が見えるのだという。松本は統合失調症だと判断するが、煌子は違うという。高野は会社をクビになり、会社のお金を盗んだのだという。何故、そこまでわかるのだろうか。
「ニンフォマニアの涙」
下川千蔵は、奥さんに襲われたのだという。奥さんの様子が最近おかしく、話を聞いているとニンフォマニアなのではないかと松本は睨む。しかし、煌子は話を聞き、奥さんは子どもを亡くしてしまったのだと言い出した。
「憑依する男の涙」
石倉という男は、腹話術をしてしゃべるようになってしまった。松本はユング的世界の虜になってしまったのだと考える。しかし、煌子の考えは違っていた。石倉は徳永という友人に利用され、会社のお金を横領しようとしていたのだ。
「時計恐怖症の涙」
田川さとみは息子の弘幸のことで相談に来た。息子が時計を怖がっているのだという。1週間、毎日習い事をしている弘幸。母親のさとみは当然だというが息子はどうだろうか。話を聞き、煌子は弘幸がいじめっこであることに気付く。
「夢うつつの涙」
なみだ研究所の波田、小野寺、松本は社員旅行へ来ていた。3人がホテル内で講義中、停電が起き、松本はどちらかに唇を奪われた。。。一体どちらが。ぼーっと過ごす中患者がやってきた。彼女の名は奥井慶子。彼女は夢と現実がわからなくなっているのだという。尾塚朋恵という友人がいるらしいのだがその人物が関係しているらしい。煌子は慶子はトランスセクシャルだという。その真相の鍵は、名前にあった。
「ざぶとん恐怖症の涙」
森田肇という今回の患者は座布団が怖いのだという。電車のつり革につかめないために会社にいけなかったり、些細な事で会社を休むようになる。松本は不潔恐怖症だと睨むが、煌子は会社拒否だという。
「拍手する教師の涙」
松本は煌子と小野寺と催眠ショーを観にいく。催眠ショーで失敗した時、何故か大きく拍手の音が聞こえた。それは、松本の中学の時の理科の先生、河本先生だった。彼は、人が失敗している姿を見ると、何故か拍手をしてしまうのだという。松本は先生の過去に何かあると感じ、催眠療法を始める。
「捜す男の涙」
久保という警察官がカウンセリングにやってくる。彼は捜し物をしているのだという。思い出すためにサイコドラマを始める。
片手では持てないある程度のもの、細長くて先が尖っている物だという。これは一体何を意味しているのだろうか。
鯨さんの作品です。
いやー。凄いです。流石です。
メンタル・クリニックなんですけど、不思議な患者さんがたくさん治療に来る。
それは動物がたくさん見えたり、時計が怖かったり、夢と現実がわからなくなったり。
それを臨床心理士の松本が根拠を述べながら病名を明らかにしていくのですが、煌子というセラピストが全く違った観点からその人の抱えている悩みを理解していく。
その内容がまた凄いです。
良くこんな事が思いつくなぁって言うくらい。
流石鯨さんです。
しかも、患者の病気についてだけでなく、研究所内の人間関係もとても分かりやすくて面白かったです。
小心者だけど真面目で努力家の松本。貧相な知識で見た目は少女にしか見えない煌子。スタイル抜群の会計士、小野寺。
それぞれキャラが引き立っているし、三角関係?も読んでいて面白かったです。
連作短編ですが、微妙に話は繋がっていて、引き込まれました。
続編の「なみだ特捜班へようこそ!」も読んでみたいと思います。
〈2001.4 祥伝社〉H21.7.20読了
そんなはずは・・・
と思いつつ
はまりましたね。
この作品。
このほかにも後3作出てますんで
ぜひ読破しちゃってください。