地球儀のスライス (講談社ノベルス)
地球儀のスライス (講談社ノベルス)
「小鳥の恩返し」院長である父が急死した事により、院長となって忙しい日々を送っていた島岡清文。綾子という看護師長と結婚もした。父は殺されたのである。救急患者として運ばれてきた男に殴られたようなのだ。その現場に残されていたものがあった。その患者がかっていたらしい、小鳥がいた。
「石塔の屋根飾り」「黒窓の会」—それは、那古野市きっての資産家の令嬢、西之園萌絵を囲んで開催される秘密の勉強会である。ゲストとして招待されたN大学工学部助教授、犀川創平は一枚の写真にまつわるミステリィを披露する。それは、インドの石塔の遺跡に関する奇妙な謎であった。
「河童」日下部淳哉は婚約者を連れてある沼に来た。そこで、其志朗というかつてのともについてを話し始める。
「気さくなお人形、19歳」小鳥遊練無は不思議な老人に話しかけられ、バイトをしないかと誘われる。それはかなり割りのいいバイトで、老人の話し相手になる事が主だった。指定された服を着て老人の住む屋敷へ行くと、使用人たちは何故か驚いているようだった。
森ミステリィのあらゆる魅力が、一杯につまった珠玉集。

森さんの短編集。第2弾です。
犀川&萌絵シリーズを読み終えたと思ったらすぐに2人は登場しましたねぇ。しかも大人数で。2人の登場した2編も面白かったですが、私があらすじを書いた作品が結構お気に入りです。
「小鳥の恩返し」は院長だった父親が何者かに殺されて、その真実が次第に分かるんだろうなとは思いましたが、その進み方が面白い。いきなり、私はあのときの小鳥です。って言い出す看護師が登場して、そう言った理由がわかると、大きく納得しましたし。
「河童」も何だか不穏な空気が立ち込め、淳哉の過去にきっと何かあったんだろうなとどきどきして読みましたし。
個人的に結構好きだったのが「気さくなお人形、19歳」老人が練無にやたらと待遇のいいバイトを薦めるのは意味があるのだと思いましたが、ああやっぱりといえる真相でした。でも、それだけじゃ終わらなくてどんでん返しが待ってるんですよね。結構大人びている練無ですが、最後はいい奴じゃないか、と心があったまります。
森さんの作品は一癖も二癖もありますが、面白くて、止まらないんですよね〜

〈講談社 1999.1〉H21.6.10読了