追伸
追伸
単身でギリシャに赴任した悟に、一方的に離婚を切り出した妻の奈美子。
2人は手紙で、互いの思いを綴る。一緒にギリシャへ赴くはずだった矢先の奈美子に襲い掛かった不幸な事故。それが離婚に関係していると悟は感じるが奈美子は肝心な所を話そうとしない。時間が欲しいのだという。
奈美子は、祖父母の間で交わされた手紙のコピーを送る。
―約50年前、祖母は殺人の容疑で逮捕されていた。
頑なな態度を貫く祖母と、無実を信じ奔走する祖父。
ふたりの手紙には、誰も知ることのない真実が語られていた…。

読み始めは宮本輝さんの「錦繍」を想像しましたが、違いましたね。
「錦繍」も最初から最後まで綺麗な作品ではなく、人間の中にあるドロドロしたものが渦巻いている所はありました。だけど、人を思う気持ちは純粋で、2人は最後は素敵な終わり方になったのではないかなと思いました。
でも、この作品は、私は正直あまり好きにはなれませんでした。
手紙を読むのも書くのも好きなので、手紙を読むような感覚で違和感なく読めたのですが、やっぱり男女関係ってヤですね。
奈美子の祖父平瀬誠治と祖母春子の夫婦愛は好きでした。
祖父の一心の祖母へ対する愛情は素晴らしいと思いましたし、祖母の境遇も同情と言う言い方は失礼かもしれないですが、仕方なかったのかもしれないとも思えました。してはいけない事をしてしまったのですけど。
でも、特に奈美子に共感する事ができず、自分は祖母と同じと言っているのも、一緒じゃない!って思いました。
時代が違いますし、奈美子の恋愛の数々は自業自得としかいえないようにも思います。
奈美子の母親が娘にしてきた事も、娘の立場としては許せません。
自分の母親が犯してしまった罪のために、小さいころに苦労をしてきたからしてしまった行為だと思うけど、娘にだってプライバシーがあります。
まあ、注意を払っていても、娘は想像していた通りになってしまったのだけど。
誠治の不器用だけど真っ直ぐな愛が1番好きです。窮屈で息が出来なくなる時もあるかもしれないけど、ここまで愛してくれるのなら、女性は本望なんじゃないかなと思いました。

〈文芸春秋 2007.9〉H21.2.13読了